2017年12月12日
  東北大学コラム

【48年目に一斉に咲いたタケ~植物がもつ「時計」の生態学~】第2回 予測通りに起きた48年目の一斉開花

東北大学大学院農学研究科准教授 陶山 佳久

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年10月6日掲載

 

タケは、長い年月をかけて成長したあと、広い範囲で一斉に咲くと言われています。インド北東部に分布するナシタケ(メロカンナ)は、2007年頃に48年ぶりに一斉に花が咲くらしいと予測されていました。私たちの研究グループでは、そのタケの生態を調査するため、当時まだほとんど詳しい情報のなかった地域であったインドのミゾラム州に赴き、現地調査を開始したのでした(図2-1)。

 

図2-1 インド・ミゾラム州の位置。インド北東部七姉妹州のうちの1つで、州都はアイザウル(Aizawl)。

 

州都のアイザウルでは、急峻な山の頂上周辺に非常に多くの建物が張り付くようにして密集しており、独特の景観を呈していました。夜には真っ暗な亜熱帯の山々の中に、忽然と光り輝く州都が浮かび上がり、「百万ルピーの夜景(?:換算すると安すぎますが)」とでも言うべき光景の美しさに驚きました(図2-2)。

図2-2 インド・ミゾラム州の州都アイザウルの夜景。

 

調査地のミゾラム州は、四国より少し広い程度の面積ですが、そのうちの3割ほどが竹林に覆われています。これらの竹林で一斉に花が咲いて枯れてしまうと、愛媛県ほどの面積が突然「枯れ竹林」になってしまうことになり、地域環境にとても大きな影響を与えると考えられます。

 

特に、タケの花が咲いて実がなると、それを食べるネズミが大発生して農作物も食い荒らされてきたという歴史があるため、一斉開花の予測は農業被害の予測でもありました(図2-3)。

図2-3 ネズミに食べられかけたナシタケ(メロカンナ)の実。

 

開花が予測されているとは言っても、その根拠は「これまでほぼ48年間隔で咲いてきた」という歴史に頼っていたので、本当に2007年頃に咲くのかどうかは、誰にもわからないことでした。私たちも、「もしかしたら咲かないかもしれない」と半分覚悟を決めながら、2005年からの現地調査を開始しました。竹林の中に20m×20m固定調査区を設置して、その中に生えているすべてのタケ(約1100本)にマークして、追跡調査を開始したのです(図2-4)。

図2-4 インド・ミゾラム州に設置された調査区の竹林。日本の竹林のような景観。

 

そして、ドキドキしながら2007年を迎えました。

 

予測は見事に的中しました。期待していたとおり、48年ぶりに一斉にタケの花が咲いたのです。この年の開花推定面積は少なくとも数千平方キロメートルに及び、文字通り大面積の一斉開花になったのです。

 

このタケが有名になった理由の1つは、このような一斉開花が大規模に起こることが知られていたことと、タケの仲間としてはその実がびっくりするほど大きいことによります。

 

ナシタケ(梨竹)という名前は、ナシのような大きな実がなることに由来しています。その名のとおり、開花後には握りこぶしほどの大きな実が竹にぶら下がり、とても不思議な光景が広がりました(図2-5)。

図2-5 ナシのような大きな実がぶら下がる一斉開花後のナシタケ(メロカンナ)の竹林。

 

このように、タケの一斉開花を前もって予測して詳しい生態調査を行ったという例は、これまで世界でも報告がない貴重な研究例になりました。

 

次回は、どのようにしてタケが48年を数えていたのかについて、そのヒントになる情報をお話しします。

 

次回は「第3回 48年前に日本に持ち込まれた種子」です。

 

出典:陶山佳久著「48年周期で咲いて生まれ変わるタケ」、(新田梢・陶山佳久編)生物時計の生態学—リズムを刻む生物の世界(仮).文一総合出版 2015年12月出版予定

謝辞:この記事は、京都大学の柴田昌三教授をリーダーとした共同研究チームによって、2005年から行われた一連の研究プロジェクトの成果にもとづいています。

 

【プロフィール】

陶山佳久(すやま よしひさ)

東北大学大学院農学研究科准教授

専門は森林分子生態学。DNA分析技術を使った植物の繁殖生態・進化に関する研究のほか、絶滅危惧植物の保全遺伝学、植物古代DNAの分析、生物多様性保全やその応用技術に関する研究など、国内外で多彩な研究を行っている。

主な著書に『生態学者が書いたDNA の本』(共著、文一総合出版、2013年)、共編著書に『地図でわかる樹木の種苗移動ガイドライン』(文一総合出版、2015年)、『森の分子生態学2』(文一総合出版、2012年)、『Single-Pollen Genotyping』(Springer、2011年)、『森の分子生態学』(文一総合出版、2001年)など。

※所属等は取材当時のものです。

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