2018年01月30日
  コラム

【脳はカルシウムがなければ働かない!?】第1回 カルシウムって骨のために必要なんじゃないの?なんで脳?

東北大学大学院医学系研究科・准教授、同大学院医工学研究科・准教授   小山内  実

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年11月9日掲載

 

このコラムでは、5 回に渡って、脳とカルシウム (Ca2+) の関係についてお話ししていこうと思います。

ここで、「なんで脳とカルシウム?カルシウムは骨に必要なんじゃないの?」と思った方も多いのではないでしょうか? (図 1)

確かに、成長期のお子さんは骨の成長のため、成人は骨を丈夫に保つため、お年寄りの方は骨粗鬆症などを防ぐためにカルシウムを摂取することが重要と言われています。まさにその通りで、骨には多くのカルシウムが含まれているため、カルシウムが不足すると骨の成長や丈夫な骨の維持ができなくなります。

 

しかし、脳はカルシウムがないと機能しません (カルシウムがなければ、心臓も、体の筋肉も動かないので、死んでしまいますが)。

 

まず、脳で最も大事なカルシウムの役割は、シナプス伝達です。脳にはたくさんの神経細胞 (ニューロン) が存在し、それらが神経回路という細胞同士が結合した回路を形成して情報を処理しています (図 2)。

ニューロンの中の情報の伝達には電気信号 (活動電位) が使われますが、あるニューロン (シナプス前細胞) から次のニューロン (シナプス後細胞) への信号の伝達には化学物質が使われています。このニューロン間で信号を伝える場所をシナプスといい、シナプスでの信号の伝達をシナプス伝達といいます (図 3)。

つまり、脳では細胞の中を電気信号が伝わり、シナプス前細胞の末端 (シナプス前末端) から化学物質 (神経伝達物質) が放出されて、この化学物質がシナプス後細胞の受容体というところに結合して、また電気信号に変換されて細胞の中を伝わる、ということを無数の細胞間で行うことにより情報を処理しているのです。

この化学物質として代表的なものには、グルタミン酸やガンマ-アミノ酪酸 (GABA) という物質がありますが、これらの化学物質は、ニューロンの中の直径 50 ナノメートルくらいの小さな袋 (これをシナプス小胞といいます) に貯蔵されています (1 ナノメートルは 10 億分の 1 メートル) (図 4)。

 

この小さな袋が破れて、細胞の外に化学物質を出すためには、基本的にカルシウムが必要なのです (図 4)。つまり、カルシウムがなければ、ニューロンからニューロンへの情報の伝達が行われないため、脳は機能しません。

後の回でも説明しますが、繰り返し同じ場所でシナプス伝達が行われるなど、様々なメカニズムによりこのシナプス伝達の効率が変化します (これをシナプス伝達の可塑性といいます)。

 

シナプス伝達の可塑性が、記憶・学習・忘却のもととなっているといわれていますが、このシナプス伝達の可塑性も、カルシウムが必要なのです。つまり、脳が働くとか働かないとかだけではなくて、記憶したり、学習したりするためにも、カルシウムが必要なのです。

第2回以降、さらに、脳とカルシウムの関係をお話ししていきたいと思います。

 

次回は「第2回 カルシウムを測って神経細胞の活動を知る!」です。

 

【プロフィール】

小山内 実 (おさない まこと)

・東北大学大学院医学系研究科・准教授、同大学院医工学研究科・准教授を兼務

・茨城県水戸市生まれ、水戸一高卒 (小学校1年までの幼少期を仙台市で過ごす)

・脳機能解明に向けて、カルシウムイメージングを主な手法として研究を行っている。

・著書には、認知機能とカルシウム―基礎と臨床― (小川純人 編) 「大脳における細胞内カルシウム振動と神経・認知機能」医薬ジャーナル社、臨床医工学・情報学スキルアップシリーズ 1 臨床医工学スキルアップ講座 (春名 正光ら 編) 「バイオイメージング」大阪大学出版会、がある。

※所属等は取材当時のものです。

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