2018年12月26日
  東北大学新聞

糖質制限の謎解明 ~ブームに警鐘を鳴らす~

東北大学新聞2018年11月号

 

昨今では大ブームとなっている糖質制限。血糖値を低く抑えることができ、短期間で脂肪の減少が期待できる。また、糖尿病の改善や予防に効果的とされる。しかしながら、長期間にわたる糖質制限においては、老化促進のリスクがあるかもしれない。

本学大学院農学研究科の都築毅准教授らは、炭水化物の摂取を減らした食事を続けることは体の老化を促進し、健康に悪影響を与える恐れがあることを示した。1年間にわたって、マウスに日本人の一般的な食事に当たる餌を与えた場合と糖質制限食を与えた場合を比較。すると、糖質制限食のマウスは、平均より短命になり、外見的な老化が顕著に表れた。特に皮膚や毛の状態の悪さが目立ったという。この実験はマウスでの成果だが、糖質制限のあり方に対し警鐘を鳴らす内容といえる。

なぜこのような実験を行ったのか。都築准教授は主に日本食の健康有益性についての研究を行い、1975年ごろの日本食が最も健康に良いという結果を得た。当時の主食は主にご飯で、総エネルギーの大部分を炭水化物から得ていたが、糖尿病になる人は今よりも少なかったそうだ。その点に着目し、「現代では炭水化物を抜いた主食が流行り、糖質は健康にあまり良くないとされていますが、真実を確かめ、正しい情報を提供したいと考えました」と語った。

また、糖質制限を行ったマウスの老化が進んだ結果に対しては次のように考察した。「糖質の摂取を減らすことによってアミノ酸に分解されるタンパク質の割合が増えます。それによって『オートファジー』(不要になったタンパク質などを細胞自身が分解し、新しいタンパク質を生成する作用や、細胞内をきれいに保つ作用)が抑制されやすくなり、不要なタンパク質が蓄積されるようになるのです。それが老化を促進しています」と話す。このメカニズムはマウスにもヒトにも基本的に当てはまる。

ただ、都築准教授は、「糖質制限を否定するわけではないです」とも述べる。今後は、糖質制限の度合いを四つのレベルに分けた実験や、オートファジーを抑制する詳細なメカニズムの解明、また、動物実験だけではなくヒトを対象にした実験でエビデンスの提示などを行いたいという。今後の展望として都築准教授は、「現在健康な人が今後も健康でいられるような食事のあり方をより良い方法で示したい。自分たちの研究だけでなく、さまざまな研究を組み合わせて、人々が最も知りたいと思うような真実を提供していきたいです」と述べた。

高齢化社会の今、食と健康への関心が高まる。今後の研究結果にも期待したい。

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