2017年10月25日
  東北大学コラム

歯みがきは万能ではない!むし歯予防の新常識

東北大学大学院歯学研究科 准教授 相田潤

 

歯みがきの大切さは、誰でも子どものころから聞いてきたことと思います。私自身そうですし、また歯科医師になるための大学生の頃にも授業でそのように教わってきました。

 

しかし、この常識にも注意が必要なことを、イギリスに留学した時の授業で知り、大変驚きました。

 

それはなにかというと「歯は複雑な形をしているため、歯ブラシの毛先の届かない・入らないすき間が存在し、大多数のむし歯はそれらの場所から発生している」ということです。

 

「歯みがきをしていたのにむし歯になった」という方は多いのではないかと思います。この理由こそが、図にあるような「歯ブラシの届かない場所」の存在なんです。

このことは、海外の歯科の教科書には実際よく書かれていますが、日本の歯科の教科書ではほとんど見られないのではないかと思います。

 

1970年代から80年代にかけて世界中で歯みがきのむし歯予防効果に関する研究が行われました。それらの結果として、歯をみがいて汚れ(プラーク)が除去しやすい前部のむし歯予防には、歯みがきの効果が大きいことが分かりました。

 

しかし、おく歯に関しては、歯ブラシの届かない溝があったり、歯と歯のすき間が狭くて歯ブラシが届かないことが多いため、歯みがきによるむし歯予防の明確な効果が見られませんでした。

 

そのため現在でも、歯ブラシだけのいわゆる「からみがき」では、むし歯予防効果が見られないことが科学的根拠として示されていて、海外では政府や歯科医師会の文章にも明記されています。ですから海外の教科書に記載されているのも当然のことなのです。

 

では、そうした歯ブラシの届かない場所のむし歯予防はどうしたらいいのでしょうか?もっとも手軽なのは、フッ化物(フッ素)の利用です。

 

現在、9割の歯磨剤(ハミガキ)にフッ化物が配合されています。フッ化物は狭いすき間にも行き届いて、むし歯のリスクを下げてくれます。フッ化物は、歯科医院での処置や、保育園・幼稚園・学校での洗口(うがい)の利用もよくされています。

 

また歯科医院では、おく歯の溝をふさぐシーラントという処置ができます。これは特に、おく歯が生えたての小学生におすすめです。

 

注意点として、シーラントは時々はがれてしまうので、定期的にチェックが必要です。

 

ただし、これらの方法でも、100%むし歯を予防できるわけでは無いので、食生活にも注意が必要です。そして当然ながら歯みがきは、届く場所のむし歯予防と、フッ化物の入った歯磨剤(ハミガキ)を利用するために、欠かせません。

 

これらの方法を重ねていくとより予防効果が高くなります。いろいろな方法をミックスさせて、より効果的なむし歯予防に取り組んでみてください!!

 

 

(プロフィール)

相田 潤(あいだ じゅん)

東北大学大学院 歯学研究科准教授

むし歯や、口の健康と全身の健康の研究、健康格差の研究に取り組んでいる。

著書には『健康の社会的決定要因 疾患・状態別「健康格差」レビュー』(共著)

(日本公衆衛生協会、2013年)他、論文約100本がある。

趣味 マウンテンバイクで山道を走ること

 

 

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