2018年03月14日
  コラム

【チーズの世界 Q&A】第1回 チーズには西洋型と東洋型がある?

東北大学大学院 農学研究科教授 齋藤 忠夫

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年2月22日掲載

 

第1回 チーズには西洋型と東洋型がある?
日本の食卓にも段々とチーズを見かける機会が増えています。

例えば、朝のトーストにとろけるチーズを使ってのチーズトーストなどです。

しかし、実はチーズについてあまり日本人は知らないようです。今回は、日ごろ私の大学講義や講演でも、良く出される質問をベースにQ&A形式でお話を進めて行きたいと思います。チーズについてもっと多くのことを知って頂くと、より美味しくチーズを頂けることは間違いないと思います。

 

Q:チーズには西洋型と東洋型がある?
A:チーズには西洋型と東洋型のチーズがあります。
皆さんはチーズという言葉を聞きますと、恐らくプロセスチーズやゴーダチーズやカマンベールチーズを思いだすと思います。

しかし、モンゴルやチベットなどのアジアの地域では、必ずしもウシではなく、馬やトナカイやラクダやヤクなどの家畜からのミルクを使っての東洋型のチーズがあるのです。

西洋型チーズは、ミルクを固める際に凝乳酵素(レンネット、キモシン)を使うのが最大の特徴です。

市販の精製レンネット(子牛の第4胃から調製した凝乳酵素、カーフレンネットとも言います)

 

一方、東洋型チーズはこの酵素を使わずに作ります。冷蔵庫がなく、水も貴重な山岳地域や砂漠では、ミルクは一刻も早く保存できる形にする必要性があったのでしょう。

私が2015年にモンゴルを訪れた際に、現地のマーケットで販売していた東洋型チーズの写真です。家庭によりいろいろな形で乾燥させるので、沢山のバリエーションがあります。(写真1)組織は石の様に固く、一晩水に浸しておいてから調理します。決して美味しさを追求する食品ではありません。

(写真1)モンゴルの市場で沢山販売される東洋型チーズ

 

Q:西洋型のナチュラルチーズはどうやって作るのでしょうか?
A:西洋型のチーズは、まず原料乳(牛乳やヒツジ乳やヤギ乳など)を63度・30分間で低温殺菌します。

フランスのAOCやイタリアのPDOなどの特別な認証を受けたチーズでは、殺菌をしない「未殺菌乳でチーズを作る」ことが義務づけられているものもあります。

殺菌した原料乳に、複数の乳酸菌からなるスターターを加えて1時間ほど発酵させます。pHが少し下がったら、乳を固める酵素(レンネット)を加えて良く撹拌します。しばらく静置すると、あの液体であった乳全体が大きな豆腐のよう固まり、これを「凝乳」と呼びます。

写真2 チーズバット全体のミルクが固まった「凝乳」 (右は固まり具合を手指で検査しているところ)

その後、1cmくらいのサイコロ状に小さく切り(カッティング)、その後徐々に温度を上げながら撹拌して行き、液体のホエイを除いて行きます。

残ったカードを集めてスタートとなるチーズが出来ます。これから、熟成の工程に入り、早いもので3ヶ月、長いものでは2、3年も寝かせ、美味しさを増してから食べます。

写真3 西洋型チーズの代表格であるパルメジャーノ・レッジャーノ (18ヶ月以上熟成した製品、表面に協会印がある)

一方、熟成させないチーズもありますね。カッテージチーズ、クリームチーズ、マスカルポーネチーズそしてピザなどでも沢山使われていますモッツアレラチーズがあります。これらは、新鮮な乳の味や香りと組織を楽しむチーズです。

 

Q:チーズつくりでは特別な乳酸菌を使います
A:前回の本アプリシリーズの「ヨーグルト」では、ミルクに乳酸菌を加えて加温することで乳酸菌を増やし、乳酸菌が作った乳酸という酸でミルクを固める形の食品でした。

ヨーグルトで使う乳酸菌にはブルガリア菌とサーモフィルス菌の2種類を使うのが特徴です。この場合は、ミルク中の乳糖を非常に早いスピードで分解利用する菌を選んで使っていますが、乳タンパク質を分解する力はとても弱いのです。

一方、チーズに使われる乳酸菌は、乳糖の分解能力よりも、長期に渡って乳タンパク質を分解し続ける力の強い乳酸菌を選んで使っているのです。

すなわち、ヨーグルトの乳酸菌でチーズは出来ないし、チーズの乳酸菌でヨーグルトは出来ないのです。

乳酸菌といっても同じではなく、それぞれの食品では役割が異なるからです。これは、あまり知られていないことですね。

チーズでもっとも多く使われる乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクチスという球菌です。電子顕微鏡での写真を示しました。(写真4)この菌が美味しいチーズを作ってくれるのです。

写真4 チーズ作りに使われるラクチス菌の電子顕微鏡写真

 

次回は「第2回 チーズがムシ歯予防に良い!?」です。

 

【プロフィール】
齋藤 忠夫(さいとう ただお)
東北大学大学院 農学研究科教授
より優れた乳酸菌を用いて新機能性ヨーグルトの開発に取り組んでいる。
著書には『畜産物利用学』(文永堂出版、2011年)他、30冊がある。
趣味 ピアノ演奏

※所属等は取材当時のものです。

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