2017年09月19日
  東北大学コラム

究極に薄い物質の登場!?【「究極に薄いもの」を作る、という科学】第4回

東北大学大学院理学研究科 教授   齋藤  理一郎

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年6月4日掲載

 

薄くて折り曲げ自由なフレキシブル・プリント回路で、くねくね曲げられる電気製品ができる、という話を進めてきた。究極に薄い物質でフレキシブル・プリント回路を作ったらどうなるだろうか、という問題提起をしたが、それについて述べる前に、究極に薄い物質の正体を明かそう。

 

それは、グラフェンである。

 

グラフェンは2004年に発見された。なぜグラフェンが究極に薄い物質であるかというと、グラフェンが炭素原子でできた原子層1層の物質だからである。すべての物質は原子という、物質の最小単位のつぶつぶでできている。究極に薄い物質があるとすれば、原子の層一層で作られる物質ということになる。

 

例えば、原子を小豆のような丸い豆と考えると、原子の層一層とは枠付きのお盆の上に豆の層が一層だけになるように隙間なく並べ、そのまま糊で豆同士をくっつけて作ったようなものである。

 

こういう物質を原子層物質と呼ぶ。

 

炭素でできた原子層1層(グラフェン)を実際に取り出して、その性質を調べるという研究が約10年前に報告され、2010年ノーベル物理学賞が授与されている。
グラフェンを用いたフレキシブル・プリント回路はまだ開発中である。しかし、ペットボトルに使われるペット薄膜の上にグラフェンを張り付けたシートはすでに市販されている。

透明なフィルム上に、グラフェンを1原子層つけたもの(市販されている)。1原子層かどうかは光の透過率が1層あたり2.3%であるので、濃淡から判断できる。写真でフィルムの上部にグラフェンがついているところとついていないところの濃淡の差がかすかに見える。この市販されているシートを何に使えるかは、わかっていない。

 

炭素と言えば、鉛筆の芯(黒鉛)など黒い物質であるが、究極に薄いグラフェンになると、透明になる。

 

また、グラフェンは驚くことに究極に薄いだけではなく電気を流す物質(金属)である。

 

しかもその電気的な性質は原子の塊より原子層1層のほうが格段に優れていることがわかっており応用上の期待が高まっている。
グラフェンの発見後、半導体や絶縁体といった電気回路に必要な電気的性質をもったグラフェン以外の原子層物質も次々に発見された。

 

この究極に薄い物質を組み合わせて、まったく透明で柔軟な電気回路が理論的にできることがわかった。すでに原子層数層でできた発光ダイオードが作られている。

 

現在は近未来の技術の進歩に伴い、より複雑な集積回路を原子層物質で作る研究が世界中で行われている。日本でも、いろいろな分野の科学者が集まってプロジェクト研究「原子層科学」が始まっている。FacebookやWebで「原子層科学」が検索可能である。究極に薄い物質を作り組み合わせる科学は、今後実用的な技術を生み出し、巨大な市場に発展する無限の可能性を秘めている。

 

 

【プロフィール】
齋藤 理一郎
東北大学大学院理学研究科教授
カーボンナノチューブ・グラフェンの研究を行い、科学研究費・新学術領域研究「原子層科学」の領域代表者として日本のプロジェクトを推進中。
趣味は、家庭菜園、ウクレレ、卓球
研究室:http://flex.phys.tohoku.ac.jp/japanese/
Facebook 原子層科学

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