2018年04月13日
  東北大学コラム

【つながりの経済学】第3回 つながりと企業の行動

東北大学大学院経済学研究科准教授 中島 賢太郎

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年4月20日掲載

 

第3回 つながりと企業の行動

前回までは、企業間のつながりが経済活動に大きな影響を与える例として、震災のような非常時に注目したお話をしましたが、企業間のつながりは、非常時だけでなく、平常時の企業行動にも大きく影響していることが知られています。

日本企業の海外進出などはその好例です。現在も、日本企業の中国、東南アジアをはじめとする海外諸国への進出が進展しています。

しかし、海外進出には大きな費用がかかり、成功するとは限りません。また、現地で生産活動を行うためには、部品の購入先や製品の販売先を確保することが重要ですが、そのような取引先を現地で新たに見つけるのは難しいということも知られています。ですので、日本で取引を行っている企業も海外に同時に進出してくれれば、海外でもその企業と取引が継続でき、利益も大きくなるでしょう。

もちろん事前に取引先とはお互いどうするか相談することもあるでしょうが、本当に取引先が進出するどうかは最後までわからないですし、進出したとしても利益が上がらず取引先が撤退してしまうこともあるでしょう。

さらにこの問題が複雑なのは、取引先企業にも自分以外の取引先がいる点にあります。つまり、取引先企業が進出するかどうかは自分との関係のみならず、自分以外の取引先との関係からも影響されます。さらにその取引先にも取引先がいますので、その取引先の行動は、その取引先の取引先の行動に影響されるわけです。さらに取引先の…と、状況はきわめて複雑であり、結局、間接的につながっていくすべての企業の行動が実は自分の行動に影響しているといえるのです。

このように他企業の行動が自分の利益に影響し、自分の行動は相手の利益に影響しており、お互いがお互いの行動を読み合わなくてはならない状況、このような状況は、いわゆるゲーム理論と呼ばれる道具で分析を行うことが可能です。

我々はこのような日本企業の海外進出行動について、このゲーム理論を用いた理論的分析を行い、さらにその分析結果について、実際の企業のつながりや、海外進出行動についてのデータを用いた統計的分析を行いました。

その結果、企業の複雑なつながりの中で「中心的」な位置にいる企業の進出確率がより高いことが示され、それが実際のデータからも支持されることを示しました。

では、ここでいう「つながりのなかで中心的」とはどういうもので、またなぜそれが重要なのでしょうか。これについては次回お話しします。

次回は「第4回 なぜ中心性が重要なのか」です。

【プロフィール】
東北大学大学院経済学研究科准教授 中島 賢太郎(なかじま けんたろう)
2003年東京大学経済学部卒業、2008年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)
東北大学、一橋大学を経て、2011年4月より現職。
専門は空間経済学・都市経済学・経済発展論。これらの分野を中心に、データを用いた統計的実証研究を行っている。

※所属等は取材当時のものです。

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