2018年03月06日
  東北大学コラム

政令指定都市の中の仙台 -暮らしに関する5つの視点でランキング- 第2回 高齢者の生活環境

東北大学大学院経済学研究科教授  高齢経済社会研究センター長   吉田 浩

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年1月19日掲載

 

第2回 高齢者の生活環境

コラムの第1回では、子供・子育て環境について大都市を比較しました。次にここでは、高齢者の生活環境についてみてみることにしましょう。

 

1.高齢化率

はじめに、20の政令指定都市について、人口に占める高齢者の割合を高齢化率として比較してみましょう。表1を見ると、仙台市の高齢化率は全国の政令指定都市の中では高齢化率が低いところからのベスト3に入っており、人口の高齢化は小さいことがわかります。

 

2.高齢者の寿命

1.では仙台市の高齢化率が高いことを指摘しました。このことは、高齢化率が高かったり低かったりすることが悪かったり良かったりすることであるといっているわけではありません。高齢化率は高齢者数÷総人口ですから、高齢者の寿命が延びて長寿化すると、その結果として高齢化率は高くなります。

 

また、逆に総人口に占める若年人口の数が減る少子化によっても、分母が小さくなり高齢化率が高くなります。長寿化による高齢化率の上昇は喜ばしい一面もありますが、少子化による高齢化率の上昇はあまり好ましくありません。そこで、ここでは高齢者の寿命についてみてみましょう。

 

表2は、65歳以上人口に占める死亡者数から求めた高齢者人口1000人当たりの1ヶ月の死亡数(率;‰)が示されています。もし、仙台市の高齢者が短命で長生きできないために、高齢化率が低いのであるなら、この死亡率は高くなっているはずです。表を見ると、仙台市の高齢者の死亡率は低い(長寿)ほうから9番目とことさら高いわけではありません。

 

このことは、仙台市の高齢化率が低いのは、若い人の流入によるものであるといえそうです。

 

3.要介護率

高齢者にとって、安心した老後というのは、単に寿命が長いということだけでは評価することができません。健康で活動的な毎日を送ることができることが、質的には重要なことです。

 

そこで、次に政令指定都市別に65歳以上の高齢者に占める、要介護認定者の割合を見てみることにします。表3にはそのランキングが示されていいます。介護認定のレベルには、軽いほうから要支援1,2、要介護1から5となっています。

 

この全部のレベルを合計して比較した場合は、仙台市の高齢者の要介護率は、低い(元気な)ほうから8番目と真ん中あたりに位置しています。

 

しかし、要支援1だけに限定して見てみると、仙台市は発生率が高い3つの都市に入っています。要支援1は介護の必要度合いは小さいので、相対的には元気な人が多いということができますが、厚生省の調べによると、近年の介護者数の増加は、要支援と要介護1までのいわゆる軽度な高齢者に占める割合が高いということです。

 

そこで、厚生省は将来のより重い介護レベルへの移行が起こらないように、介護予防事業に力を入れることになったのです。その意味からすると、仙台市は今後介護予防事業に力を入れていかなければならないということになります。

4.高齢者の自己啓発活動

高齢者の老後生活の質的側面は、身体面の充実ということだけにとどまりません。知的な生活の充実、すなわち学習活動や自己啓発などの学ぶ活動を通じて、生涯にわたって自分を成長させることもとても大切なことです。そこでここでは、『社会生活基本調査』(各個人に時間の家計簿をつけてもらう総務省の行う5年おきの統計調査)を通じて、日常生活の中での高齢者の自己啓発活動を見てみることにしましょう。

 

この平成23年の調査では、全国の中から大都市圏として、札幌、仙台、関東、新潟、静岡・浜松、中京、近畿、岡山、広島、北九州・福岡の10の大都市圏を特別に集計し、結果が公表されています。この中から、自己啓発活動として、65歳以上の高齢者のうち、①英語、②パソコンなどの情報処理、③料理などの家政・家事、④人文・社会・自然科学の学習、⑤芸術・文化」の5つについて、行動者率を見てみましょう。

 

図1を見ると仙台大都市圏の高齢者は自己啓発活動が他の10大都市圏よりもやや多いことがわかります。特に料理などの家政・家事は10大都市圏よりやや多くなっています。これはみちのくのおいしい食材のおかげなのでしょうか。また、社会・人文・自然科学などの学問的学習活動も、他の大都市圏よりやや多くなっていることは喜ばしいことです。

5.特集:若者の事項啓発活動

ここで、高齢者の自己啓発活動を見たので、若者の自己啓発活動はどうなのだろうかと気になり、少し寄り道して25歳から34歳の世代の自己啓発活動の集計結果を見てみることにしましょう。

 

これを見ると、仙台大都市圏の若者の自己啓発活動は、他の10大都市圏の結果と比べてやや低調であるという残念な項目(英語学習や人文・社会・自然科学の学習)が見られます。特にこれから国際化社会を迎える中で、英語をはじめとした語学への関心が高まれば望ましいと思います。

 

また、仙台市を中心として大学やそのほかの市民向けの学習開放講座も数多く開催されていますので、自己啓発のチャンスを活かしてもらいたいと思います。

6.総括

第2回目の今回は、高齢者の焦点をあてて、大都市同士の比較をしてみました。仙台市は、大都市の中では比較的若い人口構造を持った街といえます。

 

しかし、これは高齢者が短命であるわけではないこともわかりました。寿命以外に健康な老後の指標として、要介護率を見ると、比較的軽度な人の比率が高く、今後介護予防政策の必要性が指摘されました。健康と並んで、知的生活の充実という面で自己啓発の行動者率を見ると、仙台大都市圏の高齢者は他の10大都市圏に引けを取らない自己啓発活動をしており、むしろ若者世代の自己啓発活動が今後必要となるのではないかということがわかりました。

 

次回は、男女平等・男女共同参画の視点から政令指定都市の中での仙台の状況を見てみたいと思います。

 

次回は「第3回 仙台市の男女共同参画を検証する」です。

 

【プロフィール】

吉田 浩

東北大学大学院経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長

少子・高齢化社会の問題を経済学的観点から統計などを用いて解明。世代間不均衡、男女共同参画社会、公共政策の決定過程、玩具福祉学などを研究。

1969年、東京生まれ、1女2男の父。

※所属等は取材当時のものです。

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