2018年03月06日
  東北大学コラム

政令指定都市の中の仙台 -暮らしに関する5つの視点でランキング- 第3回 仙台市の男女共同参画を検証する

東北大学大学院経済学研究科教授  高齢経済社会研究センター長   吉田 浩

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年1月20日掲載

 

第3回 仙台市の男女共同参画を検証する

 

1.男女共同参画の視点の重要性

アベノミクスと呼ばれる現在の経済・社会政策の中で「女性の活躍」は大きなテーマになっています。

 

また、先ごろ発表された「新・三本の矢」と俗に称される政策では、「GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」の3つの目標を実現することが示されています。

 

この3つの目標は実は女性に非常に大きくかかわっているといえます。

 

まず、1974年生まれのいわゆる団塊の世代が65歳に達したのが1947年+65=2012年です。そこから毎年100万人ほどの退職が起こりました。その中でGDP(国内総生産)600兆円を実現するためには、今後毎年3.4%程度の経済成長を実現しなければなりません。

 

過去20年間でこのように高い経済成長を実現した年はありません。

 

それを、今後毎年実現するためには、団塊の世代の退職を補って余りあるほどに女性の就業率をもっともっと高める必要があります。

 

しかし、日本ではこれまで歴史的に女性の進学率が向上し、それにつれて就業率が高まると、三本の矢の第2の目標である出生率が低下してきました。したがって、女性が働きながら子育てのできる社会制度と男性の育児参加が不可欠となります。

 

さらに、第3の介護離職についても、女性の方が男性のよりも家族の介護のために離職する割合が高くなっています。また介護を受ける側の高齢者も、男性よりも女性の方が寿命が長いことから、介護をする家族も介護を受ける高齢者も女性、そして介護保険で事業者に介護を頼んでも、女性のヘルパーさんが来るというのが現状です。

 

世界に類を見ないほどの高速かつ高水準の少子・高齢化が進む日本が今後も経済成長を維持できるようにするには、この経済・社会的な問題が実は女性の社会参加と男女共同参画の問題であることに気づき、その視点で対策を練ることが必要です。

 

2.男女の平等度を測定する

男女共同参画社会の実現によって、日本の経済・社会を成長させるためには、単に「男女平等を推進しましょう」というスローガンだけでは前進しません。

 

科学的な政策を推進していく見地からも、男女平等の度合いについてきちんと定量的に測定して対策を練る必要があります。これは、手術をする前に十分に検査をして、データをそろえてから治療方針を検討するのと同じように大事なことといえます。

 

さて、男女平等の度合いを数字で表すためにはどのような方法があるのでしょうか。ここに一つの興味深い調査結果があります。「国際男女格差報告」(グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート)と呼ばれるもので、国際的な経済リーダーの集まる会議「ダボス会議」で有名な世界経済フォーラムが毎年作成しているものです。

 

この報告書の結果は、以前この東北大学コラムで紹介しました。さっそく国際的なランキングの中での日本の男女平等の度合いはどの程度であるのか、結果を復習して見てみましょう。

 

これを見ると、日本のランキングは104位と先進国の中でも極めて低い水準にとどまっていることがわかります。このランキングは、経済、教育、健康、政治の4つの領域に関して、男女の平等度合いを統計的に集計して算出しているものです。

 

今回は、この世界ランキングで用いられている測定項目を用いて、政令指定都市の男女共同参画の状況を評価してみましょう。

 

3.経済参加の平等

はじめに、経済面の男女平等として、男女間の就業率を見てみることにしましょう。最初に述べた通り、女性の社会進出が今後求められる中で、女性の就業率を男性と同じ程度まで高まる政策が必要です。

 

表2には各都市の15歳から64歳の生産年齢人口に占める就業者の比率を示しています。そして女性の就業率を男性の就業率で割って、格差を計算してあります。仙台市は、男女の就業率格差は全体の中頃ですが、女性の就業率だけでみると、60%を切って政令指定都市中19位と低くなっています。

 

女性の就業率を向上させる政策が、男女格差のランキング改善にもつながりますので、一層の工夫が必要です。

4.教育の平等

次に、子供・子育ててみた中学から高校への進学率を男女別に比較して検討してみましょう。

 

一般に、男子のうちの一部は中学卒業後に就職をするケースがあるので、単純に進学率だけを比較すると、女子の進学率が高くなる傾向になります。女子の進学率が男子より高いことは、一見よさそうに見えますが、ここでは男女の「平等」を問題としますので、格差はあまりないほうがいいことになります。

 

その観点からすると、表3の結果では仙台市は男女比が均等の1.000に近く、男女の間の進学率の格差が小さいことがわかります。

 

また、女子の進学率だけで比較してみても、仙台市はベスト5に入っており、女子の教育水準が望ましい水準にあることが伺えます。

5.政治参加の平等

最後に、女性の政治参加を見てみましょう。世界的には政治の世界で女性のリーダーシップが発揮される例を目にするようになりました。仙台市の奥山市長も女性です。ここでは、政令指定都市の各市議会に占める女性議員の比率を見ることとしました。

 

表4を見ると仙台市は川崎市についで第2位にランクしており、女性議員比率では政令指定都市の中でいい結果を見せています。ただし、その水準は23.6%とまだまだ低いものとなっています。

6.総括

今回は、男女共同参画の視点から、経済、教育、政治参加の各面から、大都市の男女平等度を比較しました。

 

その結果、教育と政治参加では、大都市中のランキングは良い位置にあることがわかりました。すなわち、男女平等のインプット面では仙台市は良い成績になるといえます。しかし、就業面といういわばアウトプット面では、仙台市の女性の社会参加、経済活動への参加にはまだまだ改善の余地があることもわかりました。

 

次回は、仙台市民の消費生活という視点から大都市を比較してみることとします。

 

次回は「第4回 仙台市民の食生活をのぞきみる」です。

 

【プロフィール】

吉田 浩

東北大学大学院経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長

少子・高齢化社会の問題を経済学的観点から統計などを用いて解明。世代間不均衡、男女共同参画社会、公共政策の決定過程、玩具福祉学などを研究。

1969年、東京生まれ、1女2男の父。

※所属等は取材当時のものです。

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