2018年03月06日
  コラム

政令指定都市の中の仙台 -暮らしに関する5つの視点でランキング- 第5回 仙台市の行財政力を評価する

東北大学大学院経済学研究科教授  高齢経済社会研究センター長   吉田 浩

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年1月22日掲載

 

第5回 仙台市の行財政力を評価する

1.行財政の能力を見る視点

私たちが住む都市、仙台について、これまで子供・子育て、高齢者福祉、男女共同参画、食生活という様々な視点から4回にわたって、全国の他の都市と比較してみてきました。

 

最終回の今回では、そのような都市を維持発展させていく仙台市の体制として、行財政能力の観点から比較分析をしてみたいと思います。

 

都市の行政の力を見るためには、その基本となる財政力を見る必要があります。

 

そこでここでは、財政(仙台市の税収や政策的な支出などのお金の面)と行政改革への取り組み、評価への取り組みの各観点から検討してみましょう。

 

市町村は、株式会社などの企業のように、株式市場や市場による競争などの評価に目に見えてさらされることがあまりありません。そのためにも、組織の状況を確認しておくことは重要といえます。ここでは、財政というお金の面の次に、組織の運営の問題として行政改革への取り組み、評価への取り組みを見ることとします。

 

2.財政収入の力:財政力指数

はじめに、仙台市が市の行政活動を行うために必要な財政収入がどれほどまかなえているのか、財政力指数という指標で見てみましょう。

 

財政力指数は市町村の基本的な税収入など(基準財政収入額)をその市町村で基本的な行政活動を行うために必要と思われる支出額(基準財政需要額)で割り、この過去3年間の平均値で求めます。

すなわち、必要なお金に対して収入がどのくらい満たされているかを示します。

したがって、この値は大きいほど収入が十分あることを示します。

 

表1には総務省公表の平成26(2014)年度決算の結果が示されています。これを見ると、仙台市は全政令指定都市のちょうど中間ぐらいに位置していることがわかります。

 

仙台市は自分の市で行うべき仕事に必要とみなされる額のおよそ87%を基本的な収入で賄えることを意味しています。この数値はまずまずの評価であるといえます。

3.今後の借金返済:将来負担比率

2.では、財政力指数という指標を使って、仙台市の過去3年分の毎年の財政収入の状況を見てみました。

 

しかし、これだけでは財政の評価は十分ではありません。たとえ、その年その年の収支は何とかやりくりできたとしても、これまで借りてきた借金の累積額が、その市町村の返済能力を超えてしまうと、破綻に直面することになります。

 

皆さんは、北海道の夕張市が平成19(2007)年に財政破綻のために財政再建団体に指定されたことを覚えていませんか。そのとき問題になったのは、市が公式・非公式に多くの借金をしていて、そのことが毎年の決算書類からはすぐにはわかりにくかったことでした。

 

この教訓から、地方財政健全化法により市の決算だけではなく、第3セクターや市の関連団体も含めて、将来に市が(=市民が)負担しなければいけないすべての負債が市の財政規模の何倍あるかを「将来負担比率」として公表することが定められました。

 

これを見ると仙台市の将来負担比率はやはり政令指定都市の中間の133%余りであることがわかります。政令市の中では中間に位置しますが、市町村平均は45%であることを見ると、将来に向けて借金は計画的に整理していかないと、将来の仙台市民世代の負担が増加してしまいます。

4.行政改革の取り組み

次に、政令指定都市の行政改革の取り組みを見てみることにします。

 

その理由は、いくら財政の上で黒字が多くとも、市の行う行政活動が効率的、効果的に行われていなければ、その年に住む市民の生活は向上しないからです。

 

全国の地方自治体の行政改革については、総務省が「地方公共団体における行政改革の取組状況」を調査し、平成27年3月31日に結果を公表しています。

 

ここでは、その結果のうち定数管理、給与制度の見直し、ICTの活用、情報公開・透明性など13項目の行政改革のテーマについて、取り組みの有無=1点、さらに数値目標の有無=1点とし、最高を100点とする独自の指標を作成しました。

 

結果は、表3に示されています。これを見ると仙台市は12位にランキングされており、政令指定の中での行政改革をリードしているとは言えない状況です。

 

トップの相模原市は80ポイント以上を獲得しているので、仙台市もぜひより多くの改革項目を実施し、かつ数値目標を定めて、着実に効率的、効果的な行政活動を実現する体制を整備してもらいたいものです。

5.行政評価の取り組み

行政力に関する最後の比較検討の項目として、ここでは行政評価ということに注目してみましょう。4.では行政改革のための体制を見ましたが、いくら効率的、効果的な行政を志向する制度や目標、プランを作っても、その計画がきちんと成果を上げているかを確認しなければ、それは計画倒れとなってしまいます。

 

そこで、行政活動がきちんと成果を上げているか評価・採点を行うシステムについてみてみましょう。これについても、総務省が「地方公共団体における行政評価の取組状況(平成25年10月1日現在)」という調査を実施し、平成26年度3月25日にその結果を公表しています。

 

全国の政令指定都市で行政評価はすでに広く行われていますので、ここではその行政評価がそのあとの行政活動に効果を及ぼすような活用をされているかについて調べるために、評価結果の予算要求、査定、その年度の事業の執行、次年度の方針策定などに反映されているかで、☆の点数を与え、星の数が多い都市からランキングしました。

 

その結果が表4です。これを見ると仙台市は行政評価を行ってはいるものの、その評価結果が予算や事業の執行、翌年度の方針の策定に十分反映される体制とはなっていません。

 

評価が適切にフィードバックされて、PDCA(プラン、ドゥー、チェック、アクセス)のサイクルを回していくことは民間企業では重視されています。

 

6.総括

ここでは、仙台市の行財政能力を、決算の面と行政改革、行政評価の面から比較検討しました。

 

その結果、仙台市は財政(お金)の面では、政令指定都市の中で中位にあり、ことさらに財政力に不安があるというわけではないことがわかりました。

 

しかし、実際の行政の実施過程において、行政改革、行政評価の予算や施策への反映という点では、他の政令指定都市に比べてまだまだ改善するべき点があることもわかりました。

 

仙台市民が健康で安全にそして住民福祉を実感できる形で暮らせるためにも、仙台が先駆けて、工夫に富んだ進んだ行政システムを確立させて、他の政令指定都市の見本となってもらいたいと思います。

 

【プロフィール】

吉田 浩

東北大学大学院経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長

少子・高齢化社会の問題を経済学的観点から統計などを用いて解明。世代間不均衡、男女共同参画社会、公共政策の決定過程、玩具福祉学などを研究。

1969年、東京生まれ、1女2男の父。

※所属等は取材当時のものです。

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