2018年04月23日
  東北大学コラム

【どうなる?未来の砂浜】 第1回 山から海へ、砂の旅 ~砂浜の形成~

東北大学災害科学国際研究所 准教授    有働恵子

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年4月25日掲載

 

第1回 山から海へ、砂の旅 ~砂浜の形成~ 

東北大学災害科学国際研究所の有働です。
専門は海岸工学で、これまで砂浜にかかわる研究をしています。
ということで、今回は、砂浜の話をしてみたいと思います。
みなさん、最近海に行く機会はありましたか?
海って、どんなイメージでしょうか?

春の温かい日の浜辺の散歩
夏の暑い日の海水浴
秋の台風の日に堤防にうちつける荒々しい波
冬の日本海の荒れ狂う波と雪景色

図:(左)鳥取県の夏の海岸、(右)山形県の冬の海岸

時に穏やかに、時に荒々しく、様々な表情を見せてくれる海。
5年前の津波を思い出してしまう方もおられるかもしれません。
穏やかな風景には浜が、荒々しい風景には波が、そこにあるのではないでしょうか。

さて、では砂浜はどんなところにあるでしょうか。
下の図は、日本全国の砂浜の平均的な幅(正確には,各沿岸における砂浜面積を砂浜の長さで割ったもの)を示したものです。

日本全国いろいろなところに砂浜がありますが、特に広い砂浜があるのは、青森県と茨城県、鳥取県です。砂浜といえば沖縄県のイメージが強く、意外かもしれませんね。最近では、車で走れると話題の千里浜なぎさドライブウェイ(石川県)も有名です。しかし、これらの砂浜は、自然の状態でその姿を保っているのではなく、養浜(砂をよそからもってきて砂浜をつくること)などで維持されている場合が多いのが現状です。

図:養浜中の沖縄県の砂浜

それは,なぜなのでしょうか?

砂浜は、長い年月をかけて、山から川、川から海へと運ばれてやってくる砂によって形作られます。だから、大量の土砂を運ぶことができる川が流れ込んでいる海岸には大規模な砂浜が形成されることになります。それから、波により侵食されてできた海岸沿いの崖のことを海食崖といいますが、波が崖を侵食することで土砂が生産され、これが海岸沿いに運ばれて砂浜が形成される場合もあります。

この砂浜、実は、海岸を管理する上で、とても優秀なものなのです。
『海岸法』という海岸を管理する上で重要な法律では,「防災」「環境」「利用」が法目的として定められていますが、砂浜はこの3つすべての目的をかなえます。
「利用」は、皆さんもビーチリゾートやマリンスポーツなどでお馴染みですよね。
「環境」についても、ウミガメの産卵などに代表されるように、砂浜は動植物が生息する独特の生態系を育む重要な場所です。

図:(左)静岡県浜松市の海岸におけるウミガメ保護の取り組み(http://sanctuarynpo.jp/

(右)名取市の海岸におけるハマボウフウ保護育成の取り組み(http://hamabouhuu.info/

では、「防災」は...? 実は、砂浜は波のエネルギーを弱める効果を持っているんです。
悪天候で波が高いときに海を見ていると、沖の方から白波が立って波が砕ける様子が見られます。
これを砕波(さいは)といいますが、波のエネルギーを弱める重要な自然現象です。
日本の砂浜の多くは、その陸側に堤防がある場合が多いですが、砂浜幅(砂浜の一番陸側から海岸線までの距離)が大きいと、堤防から海岸線までの距離も長いのでそれまでの間に何度も砕波してエネルギーをより弱めることができます。
砂浜がなければ、波のエネルギーが弱められることなく海岸に到達してしまい、災害のリスクが高まります。

図:砕波

このように、長い年月をかけて形成される、私たちにとって重要な役割を果たしてくれる砂浜ですが、砂浜は今、危機に瀕しています。
このコラムでは、砂浜の現状をお伝えし、未来の砂浜について考えてみたいと思います。

次回は、『そして、砂浜はなくなった ~日本の砂浜の過去~』です。

 

【プロフィール】
有働恵子
東北大学災害科学国際研究所 准教授
筑波大学大学院工学研究科において博士課程修了。独立行政法人 港湾空港技術研究所 研究官を経て、2006年東北大学大学院災害制御研究センター 助手(2007年より助教)。2010年同センター 准教授を経て、2012年より現職。このコラムの掲載にあたり、自分で撮った砂浜の良い写真を探すのに苦労したので、写真の腕を磨こうと画策中。

※所属等は取材当時のものです。

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