2018年04月23日
  東北大学コラム

【どうなる?未来の砂浜】第4回 厳しさを増す海岸環境 ~日本の砂浜の将来~

東北大学災害科学国際研究所 准教授    有働恵子

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年4月28日掲載

 

第4回 厳しさを増す海岸環境 ~日本の砂浜の将来~

東北大学災害科学国際研究所の有働です。
前回は、現在の日本の砂浜がどのように状態にあるのかという話をしました。
今回は、将来の日本の砂浜がどうなるのかという話をしてみたいと思います。

ところで、皆さんはIPCCって聞いたことありますか?
昨年のパリ同時多発テロ直後の2015年11月30日~12月11日に、パリで気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が行われたことは、ご存知の方も多いかもしれません。

この気候変動対策を考える上で、科学的な根拠として使用されているのが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が6年に一度発表している報告書です。

一番最近では2013年にIPCC第5次報告書が公表されました。
この中で、地球温暖化は疑いの余地がなく、21世紀末頃に世界の平均気温は0.3~4.8度上昇し、海面は26 cmから82 cm上昇すると予測されています。

図:世界の平均海面上昇量予測結果(IPCC, 2013;参考資料はこちらから)

この海面上昇、1 m程度であっても、砂浜には影響大です。
だって、砂浜ってわりと平坦ですよね?

下の図のように、日本の砂浜の多くは、1/20~1/50程度の勾配、つまり、砂浜を20 m~50 m陸に向かって歩くと地面が1 m高くなるくらいの勾配なんです(図はわかりやすくするために縦横の縮尺が正確ではありません)。
勘のいい人はピンと来たかもしれません。
そう、1 m海面が上がると、海岸線が20 m~50 m陸側に移動しちゃうくらいの影響があるんです。前回お見せしたように、日本全国の平均砂浜幅は43m(1990年頃)でしたよね。
砂浜にとっては一大事です。

図:海面上昇と海岸線位置の変化の関係(砂浜の勾配が1/20のとき)

この将来の海面上昇に伴う砂浜消失の予測結果が以下の図になります。
予測では、海面上昇による水没に加えて、砂の移動による侵食も考慮しています。
海面が82cm上昇した場合、全国的に砂浜幅がかなり狭くなってしまうと予測されます。

図:21世紀末の砂浜消失率の予測結果(海面が82cm上昇した場合)(有働・武田,2014)
参考資料はこちらから

また、地球温暖化により、豪雨や干ばつの増加、台風の巨大化に伴う高潮・波浪災害の増加も懸念されます。現段階では予測の不確実性が大きいため、この砂浜消失予測では考慮していませんが、台風が通過するときなどの波が高いときにも砂浜は侵食されます。

また、下の図のように、宮城県山元海岸では、すでに海岸侵食が進んでいたところに、2011年津波により大規模な侵食が生じました。被災直後は回復が見られたのですが、徐々に回復は鈍化し、5年たった今でも十分に回復していません。こういった海面上昇以外の影響まで考慮すると、砂浜にとってはより深刻な状況です。

図:1947年から2012年までの宮城県山元海岸の変化(1947~2011年国土地理院撮影空中写真、2012年GeoEye-1衛星画像)

前回も話しましたように、侵食しちゃダメならば、お金をかけて養浜(通常は養浜と合わせて構造物をつくり侵食しにくくする)をしなきゃなりません。

ある1つの海岸で行う養浜だけでも何千万円とか何億円といったお金がかかります。
でも、海面上昇は全国ですよ?ものすごくお金がかかりそうです。

 

最終回は、『砂浜の価値は? ~砂浜維持の費用と便益~』です。

 

【プロフィール】
有働恵子
東北大学災害科学国際研究所 准教授
筑波大学大学院工学研究科において博士課程修了。独立行政法人 港湾空港技術研究所 研究官を経て、2006年東北大学大学院災害制御研究センター 助手(2007年より助教)。2010年同センター 准教授を経て、2012年より現職。このコラムの掲載にあたり、自分で撮った砂浜の良い写真を探すのに苦労したので、写真の腕を磨こうと画策中。

※所属等は取材当時のものです。

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