2018年04月23日
  東北大学コラム

【どうなる?未来の砂浜】第5回 砂浜の価値は? ~砂浜維持の費用と便益~

東北大学災害科学国際研究所 准教授    有働恵子

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年4月29日掲載

 

第5回 砂浜の価値は? ~砂浜維持の費用と便益~

東北大学災害科学国際研究所の有働です。
前回は、将来の日本の砂浜がどうなるのかという話をしました。
最終回は、砂浜の価値とそれを維持するための費用について話をしてみたいと思います。

砂浜って、どんな役割を持っているのでしょうか。
このシリーズの1回目と3回目にお話しした海岸法がヒントです。

1999年に改正された海岸法では「防災」に加えて、「環境」と「利用」も法目的として追加されました。

そして、砂浜はこの3つすべての目的をかなえる優秀なもので、砂浜がなければ、「防災」「環境」「利用」すべての面において悪影響があります。
「利用」は、皆さんもビーチリゾートやマリンスポーツなどでお馴染み、「環境」についても、ウミガメの産卵などに代表されるように、動植物が生息する独特の生態系を育む重要な場所でしたね。

「防災」は... そうそう、「砕波」がキーワードで、波のエネルギーを弱め、災害のリスクを減らしてくれるのでした。

前回、気候変動による海面上昇により、日本全国で砂浜が消失する可能性があることをお話ししました。しかし、砂浜は大事だよね...とはいっても、問題はやっぱりお金です。
ある1つの海岸で行う養浜だけでも何千万円とか何億円といったお金がかかります。

気候変動に対応するための策には、「緩和策」と「適応策」があります。
「緩和策」は、気候変動(地球温暖化)を緩和するために、その主な原因となっているCO2などの温室効果ガスの排出を削減したり、温室効果ガスを吸収したりする対策のことです。

一方、「適応策」は、緩和策を行っても避けられない悪影響に備える対策です。
例えば、これまでにお話しした養浜や、離岸堤・ヘッドランドなど砂を動きにくくする構造物の設置は、砂浜侵食に対する「適応策」になります。

なお、適応策には、
「防護」(養浜や構造物等で砂浜侵食を防ぐこと)、
「順応」(家の床を高床式にするなど生活様式等を工夫し、砂浜が侵食してその防災機能が失われたとしても被害が出ないようにすること)、
「撤退」(被害が出る場所から撤退し,自然に任せて砂浜侵食を受け入れること)
の3つの段階があります(参考資料はこちらから)。

このいずれの適応策をとるかは、例えば養浜や構造物を整備することによって得られるメリット(便益)と整備にかかるコスト(費用)の関係で判断します。
だって、便益より費用の方がずっと大きかったら、整備しないほうがいいですよね。

砂浜を整備することにより、「防災」「環境」「利用」の面でどれだけのメリットがあるのか(砂浜の価値)、それぞれを金額に置きかえて足し合わせることによって、整備により得られる便益を計算することができます。

でも、この砂浜の価値の算定は、結構難しいんです。
なぜなら、それは私たちの価値観によって決まるものであり、私たちを取り巻く環境の変化によって変わっていくものでもあるからです。

未来の砂浜は、どのような姿になるのか?
それは、私たちが何に価値をおき、どのように税金が使われるのか、という問題でもあります。
過去に、人為的な影響で大きく姿を変えた砂浜。
その姿を元に戻すことが容易ではないことを、私たちは既に知っています。

未来の砂浜はどうあるべきか。
このコラムを通して,あなたはどう思われましたか?

(本コラムで使用した砂浜の写真は、すべて日本の砂浜の写真です。世界にはさらに多様な砂浜が存在します。)

 

【プロフィール】
有働恵子
東北大学災害科学国際研究所 准教授
筑波大学大学院工学研究科において博士課程修了。独立行政法人 港湾空港技術研究所 研究官を経て、2006年東北大学大学院災害制御研究センター 助手(2007年より助教)。2010年同センター 准教授を経て、2012年より現職。このコラムの掲載にあたり、自分で撮った砂浜の良い写真を探すのに苦労したので、写真の腕を磨こうと画策中。

※所属等は取材当時のものです。

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