2017年10月26日
  コラム

花粉症と対策

東北大学大学院薬学研究科 教授 平澤典保

 

近年、花粉症や食物アレルギーなど、アレルギーを原因とする病気が増えています。今や誰でも、何かに対するアレルギーを持っていても不思議ではないくらいです。

 

しかし日本人で最も多いのは何と言っても花粉症でしょう。春のスギ花粉はもちろん、秋もイネやブタクサの花粉症で悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

 

花粉症では、くしゃみや鼻水が止まらなかったり、目が痒くなるなど辛い症状が出ます。そのため多くの方は、花粉症の薬を使っていると思います。

 

薬を飲むと、そのときは楽になりますが、翌年にはまた花粉症になります。しかも年々、徐々に悪くなっていく気がする方が多いのではないでしょうか?

 

花粉症はどうして起きる?

 

花粉症とはどのような病気でしょうか?食中毒などとは違って、原因となる花粉にアレルギー症状を誘発する毒素が含まれているのではありません。

 

花粉症とは、ウイルスや細菌よりもずっと大きな花粉が、体の中に侵入してくるのを防ぐための反応です。

 

花粉症の辛い症状は、本来、鼻に入った花粉を鼻水で洗い流し、吸い込んだ花粉をくしゃみで吹き飛ばすためのものなのです。

 

ではその花粉症はどのように誘導されるのでしょうか?

 

花粉症は2段階の反応からなっています。

 

第1段階は、花粉症を起こす準備段階です。

 

花粉が体内に侵入したときに、その情報を記憶し、「IgE抗体」と呼ばれるY字形のタンパク質を合成して、記録します。このタンパク質は、「マスト細胞」と呼ばれる細胞の表面に結合して、記録された花粉と同じものが再び入ってくることを常に監視します。

 

この段階ではまだアレルギー症状は出てきませんので、自分では花粉症になったことに気がつきません。

 

このような状態にある人が再び同じ花粉が飛び時期になると、第2段階目の反応が誘発されます。

 

花粉が再び体内に侵入してくると、マスト細胞がIgE抗体を介して、「また花粉が侵入して来た」ことをキャッチし、「ヒスタミン」という化学物質を放出して警告を出すのです。そしてこのヒスタミンが上述のような、花粉を体に入れないようにするための反応を誘発するのです。これが第2段階です。

薬が効くところは?

 

花粉症の薬の多くは、マスト細胞からのヒスタミンの放出あるいはその作用、つまり第2段階を抑えるものです。それにより花粉症の症状はすみやかに抑えられます。

 

一方、厳密な意味で、第1段階に効く薬は今のところありません。したがって、現在の薬では、花粉症の症状を緩和することはできても、花粉症を治すことはできないのです。

 

注意しなければならないことは、同じ花粉が再び侵入して来ると、第2段階の反応により花粉症がおきるとともに、さらに第1段階も進行してIgE抗体の産生が増加するということです。

 

そのため、薬を飲んで楽になっても、その陰で第1段階は進行します。薬を飲んで、症状が出ないからといって、マスクなどをしないで外を歩きますと、花粉が体内に入り、知らず知らず第1段階が進行します。その結果、翌年はより強い症状が出やすくなるのです。

 

花粉症を治すことはできない?

 

花粉症を治す薬はまだ開発されていません。でも第1段階を緩和する方法が最近開発されました。「舌下減感作療法」と呼ばれています。

 

私たちの体が持っている免疫の仕組みを利用するもので、アレルギーの原因となっている花粉を適切に処理し、排除するのではなく逆に、少しずつ舌下から体に取り込ませるというものです。そうすると徐々に体が花粉を有害なものと判断しなくなっていくのです。

 

しかしこの方法は、全ての人に有効というわけではなく、副作用も出やすいなど問題点もあります。そのため、この治療を行うためには、まず病院でお医者さんとよく相談することが大事です。

 

より悪くならないために

 

現在では、優れた薬がたくさん開発されていますが、残念ながら症状を緩和する薬がほとんどです。薬を飲んで症状を緩和しながらも、マスクや眼鏡をして、花粉が体内に入ってくることを最小限にすることが、花粉症を悪くさせない大事な心構えと言えます。

 

【プロフィール】

平澤典保(ひらさわ のりやす)

東北大学大学院 薬学研究科教授

アレルギー性皮膚炎、金属アレルギーの発症機構の解明と、新しい抗アレルギー薬の開発研究に取り組んでいる。

 

 

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