2017年10月19日
  東北大学コラム

【震災の教訓を生かすために 最新!災害対策の課題】 第1回 津波発生の論争

東北大学災害科学国際研究所所長(津波工学教授)   今村 文彦 教授

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年8月10日掲載

 

日本列島に位置する我が国は地震大国であり津波常襲地域であるために,過去に何度も津波の来襲を受け被害を出してきました。

 

しかしながら,地震の後になぜ津波が発生するのかは,長い間不明のままでした。明治29年の三陸地震津波の発生当時,この発生の謎に関していくつかの学説が挙げられていました。

 

その中でも代表的だったものが,大森房吉博士の海震説今村明恒博士の海底変動説でした。前者は,地震動により水面も振動し湾内の水が上下に動き出し増加してくるというもので(固有振動や共振と呼びます),なぜ大きな津波が海域で突然に発生するかを説明しようとしました。

 

一方,後者は,地震によって海底が上下し,その上の海水を動かすという説です。津波被害が広域であること,地震発生からある程度の時間の経過後に来襲している状況を理由としました。当時,地震および津波の観測・記録が限られていたため,実態を説明するには,不確定な要素が多くあったのです。

 

幾多の論争を経て,津波の到達時間,沿岸での波高増幅,発生効率などの点から今村説が一般的な発生機構として認められており,現在の津波数値解析の基礎ともなっています。ただし,大森説の固有振動現象は,発生時の津波周期と湾内固有周期との対応として理解すれば,現在でも支持されるでしょう。

 

【プロフィール】

今村 文彦

東北大学災害科学国際研究所所長(津波工学教授)

津波工学や自然災害科学を専門とし、東日本大震災後には、国内外での防災・減災社会構築のための実践的防災学を研究している。

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