2017年12月20日
  東北大学コラム

【宇宙への行き方、教えます!】第5回 宇宙へ行くのに拾い食い

東北大学大学院工学系研究科JAXA連携講座客員教授 兼 宇宙航空研究開発機構(JAXA)アソシエートフェロー  富岡 定毅

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年10月16日掲載

 

東北大学大学院JAXA連携講座の富岡です。前回は、近い将来のロケットについてお話ししました。今回はもう少し先の話です。

 

再使用の話をしました。コストが劇的に下がれば宇宙旅行も近づこうと言うもの。でも、何回も使おうとすると、帰って来る仕立(翼とか脚とか)や頑丈さの要求から機体は重くなり、エンジンの無茶を減じるのに性能は落とした方がよく、結局宇宙に辿り着くのが大変になります。ならば何が減らせるか?

 

ロケットでは、燃料の他に、燃料を燃やす為の酸素も全部背負って行きます。これが結構重い。ところが飛んで行く最中に大気中で口を開けると、空気が勝手に入ってきます。これを使えば積んで行く酸素の量を減らせる分、色々重くなっても大丈夫でないかい?ということで、ロケットにジェットエンジンを積む研究をJAXAで続けています。

 

早く飛んでいれば空気の勢いも大きく、せき止めるだけでぎゅっと圧縮されてくれるので、燃料噴いて燃やして後ろから勢い良く噴いてやればジェットエンジンの出来上がり!空気の勢いを使うジェットエンジンをラムジェットエンジンと言い、単なる筒です(図1)。前から覗くと後ろが見えます。このエンジンを有効に使う為に、なるべく水平に空気の中を飛んで速度を稼ぐのです(図2は風洞という地上の設備で作動しているエンジンの様子)。

 

空気の中を飛ぶ旨味がもう一つ。翼を使う事です。翼は魔法の仕掛けで、進行方向に翼を押し止めようとする力(Drag)よりも遥かに大きな浮く力(Lift)を生みます。

 

エンジンは押し止めようとする力に勝てば、加速して行けます。垂直に打ち上って行くロケットでは浮く力をエンジンが全て出すので、自分の重さの1.5倍位の推力が要りますが、翼がついていれば自分の重さの0.7倍くらいの推力で十分。

 

つまり馬鹿みたい大きな推力(エンジンの重さに比べて)が要らないのです。とするとエンジン性能を落としても大丈夫!他にも、重力と垂直方向に加速して行く方が効率的、という話しも有ります。興味のある人は「ホーマン軌道」で調べてみて下さい。

 

ではジェットエンジン付ければ楽勝?かと言われると、そう簡単ではありません。ロケットエンジンは飛んでいる速さに拠らず淡々と仕事をしますが、ジェットエンジンは飛んでいる速さに拠って流れ込む空気の速さも変わり、性能がどんどん変わるのです。おまけにロケットの様に小さく軽く作るのは大変。

 

すごく性能の良いジェットエンジンでも、自分の重さの10倍の力を出すのがやっとです。エンジンを軽く作らないと、折角積んで行く酸素の量を減らしたのが台無しになります。他に空気といつも擦れながら飛んで行くので、速い空気がぶつかって熱くなる事への対策とか有って、そう簡単ではありません。

 

まずすごく速く飛ぶところから何とかして、次にもっと推力出して加速して行く、という順々のアプローチが世界的かな。

 

色々問題はありますが(研究者としては嬉しい限り)、何とか(図3)みたいに何処も捨てない、格安ロケットを作って宇宙旅行を目指したいな、と思っています。退職金を使うのは奥さんの反対に遇いましたので、もっと安くしないと!

 

以上、宇宙へ行く事について駆け足のコラムでした。お付き合い感謝!

 

【プロフィール】

富岡 定毅(とみおか さだたけ)

東北大学大学院工学系研究科JAXA連携講座客員教授

宇宙航空研究開発機構(JAXA)アソシエートフェロー

将来のロケットについての研究を、主にエンジンの面から進めつつ、学生さんとの関わりも楽しめる有難いポジションにいます。

趣味:スターウォーズと飛行機大好き。最近料理にハマっている。酒飲み。

※所属等は取材当時のものです。

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