2019年10月17日
  まなぶひと

まなび情報誌「まなぶひと」 2019年11月号 Vol.64

特集:附属図書館企画展 チャールズ・ダーウィン⽣誕210 年記念

―『種の起源』の起源―

 

進化論の提唱者として現在広く認知されているチャールズ・ダーウィンが、英国海軍の測量船ビーグル号に乗船して世界周航へ出発したのは、1831 年、彼が⼤学を出たばかりの22 歳の時。それから『種の起源』が出版されるまでには実に30 年近い歳⽉を要することとなる。

好奇⼼豊かなチャールズ⻘年が、ガラパゴス諸島などでの豊かな経験をもとに彼の仮説をまとめ上げ、それを世に公表するまでの間には、どのような経緯、あるは葛藤があったのだろう。

ダーウィンを取り巻く当時の世界観を軸に、進化論の歴史を研究者たちの⾜跡から辿る企画展が、この秋東北⼤学附属図書館で開催される。

 

『種の起源』の誕⽣の謎を紐解く⼀冊の本がある。地質学者チャールズ・ライエルの『地質学原理』である。

ライエルは、地球は、“ノアの⽅⾈と⼤洪⽔” に描かれたような天変地異、天地創造によって形作られたのではなく、岩⽯の⾵化や浸⾷、河川による堆積や⽕⼭の爆発など、現在も⽬の前で起こっている⾃然の現象が⻑⼤な年⽉積み重なることによって出来上がり、そして今現在もその変化が起こり続けている、という “⻫⼀説” を主張していた。

ビーグル号乗船中にこの本を愛読し、実際に世界各地で地震や⽕⼭噴⽕など様々な地球の活動を⽬の当たりにしたダーウィンは、⽣物も同様に変わってきたのではと考えた。そして帰国後、この世の⽣物はすべて神の⼿によって⼀時に創造されたのではなく、⻑⼤な地球の歴史のなかで、⾃然との何らかの相互作⽤により、微⼩な⽣命から哺乳類に⾄るまで、共通の祖先から様々な種類の⽣物が分かれてきたのではないか、という進化論に思い⾄ったのである。

さらに、ガラパゴス諸島での島ごとに微妙ながらも明らかに異なるゾウガメやフィンチの姿などを観察していたダーウィンは、マルサスの『⼈⼝論』などにも触発され、“⾃然選択説” による進化論の考察と確信を深めていく。

 

ただ、このキリスト教的創造論を否定する学説の公表は、憚られた。ダーウィン以前にも、ラマルキズムで知られるフランスの博物学者ジャン・ラマルクなど、独⾃の進化論を提唱した学者はいたが、当時はまだ聖書のなかの創世記の記述が真実であるとする科学者も多くいた。特に尊敬していたライエルが創造論者であったことなどから、ダーウィンも表⽴って⾃らの主張を打ち出せなかったのである。

 

そのままダーウィンの中だけで温め続けられていた進化論は、ひょんなことから世間に公表される機会がもたらされる。東インド諸島に滞在中の博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスからの⼿紙である。

ウォレスの⼿紙は、⾃⾝の論⽂をダーウィンからライエルに推薦してほしいというものだったが、その論⽂の内容が、なんと⾃分の考えた⾃然選択説と⽠⼆つだったのである。

⻑年温め続けてきた⾃分の⻁の⼦の学説が、他⼈にも思いつかれ、そしてなおかつ⾃分よりも先に世に発表されてしまう。その時のダーウィンが感じた衝撃と悲嘆はいかばかりであったろう。

結局、ライエルらの執り成しにより、1858 年、ダーウィンとウォレスの説は同時に学会で発表されることとなった。そして翌年出版されたのが『種の起源』である。22 歳で世界航海へ出かけた⻘年は 50 歳になっていた。初版の千数百部は予約販売の時点で完売したという。

 

そのうちの 1 冊が、東北⼤学附属図書館に所蔵されている。これは 2011 年、附属図書館の創⽴百周年を記念し、本学名誉教授の岡本宏⽒より寄贈されたものである。⽒は 1997 年、ニューヨークで⽴ち寄った古書店で⼊荷の情報にありつき、2 万 6 千ドルでこれを買い求めた。図書館への寄贈にあたっては、「コペルニクスやニュートン、ダーウィンを⽬指すくらいの気概をもって研究せよ」という若い世代の研究者たちへの思いが込められている。

 

ダーウィンの⽣誕から210 年。進化論にまつわる時代時代の書物が⼀同に介するこの機会に、ダーウィン、そして進化論の辿った道のりに思いを馳せてみてはいかがだろうか。

ダーウィンはビーグル号の航海で数多くの標本を収集したが、そのうち、哺乳類の化⽯については解剖学者リチャード・オーウェンに研究を託した。この成果等をまとめたのが『ビーグル号航海の動物学』の第 1 部第 1 号(写真)だが、附属図書館が所蔵する本資料にはオーウェン直筆のサイン、書き込みがある。オーウェンは「恐⻯ (Dinosaur)」という⾔葉を創り、⼤英⾃然史博物館を創設したことでも有名。

 

令和元年度東北⼤学附属図書館企画展 チャールズ・ダーウィン⽣誕210 年記念

「蔵書でたどる『種の起源』への道のり〜進化× 深化」

【会期】令和元年11 ⽉1 ⽇(⾦)〜11 ⽉15 ⽇(⾦)10:00-17:00 (11/9,10 は閉場)

【会場】東北⼤学附属図書館本館多⽬的室

記念講演(ダーウィンの『種の起源』/ 植物の結婚〜カール・リンネと⾃然の体系〜)

【⽇時】令和元年11 ⽉5 ⽇(⽕)15:00-17:00

【会場】東北⼤学附属図書館本館1 階フレキシブルワークエリア

【問い合わせ】

東北⼤学附属図書館 TEL:022-795-5911(代表)

詳しくは、こちら

 

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