2018年02月26日
東北大学コラム
【「自分の顔」をめぐる謎】第1回 動物は自分がわかるか?
東北大学 加齢医学研究所/災害科学国際研究所 准教授 杉浦 元亮
仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年12月21日掲載
あなたは日ごろ、鏡を見ますか?
一日の間に何度も鏡で髪型や化粧を確認する人もいれば、よほどの理由がない限り鏡など見ないという人もいます。
ただ、どんな人でも目の前の鏡に映っている自分を見て、自分であることを疑う人はいないでしょう。
我々人間にとって、目の前の鏡の中の自己像を認識できるのは、当たり前のことです。
しかし動物では必ずしもそうではありません。
鏡の中の自己像を自己と認識できる動物はむしろ少数派なのです。
鏡像自己認知ができると誰もが認める動物は、チンパンジーやオラウータンといった類人猿の一部だけです。
普通のサルは3年間鏡の前で暮らしても、遂に鏡の中の自分を自己と認識しなかったそうです。
最近はイルカやゾウ、カラスの仲間が鏡像自己認知できるか否かについて、動物心理学者たちの議論が続いています。
鏡像自己認知ができる動物とできない動物は何が違うのでしょう。
一つの重要な違いは「社会性」だと考えられています。
鏡像自己認知ができる動物は、いずれも他の個体の気持ちや考えを推測する能力を持っているようです。
鏡と社会性の関係が人間にも当てはまるかどうかはわかりません。
鏡ばかり見ている人と寝癖の立っている人では社会性が違うのでしょうか?
ぜひあなたの周りの人で確かめてみて下さい。
次回は「第2回 自分の身体とは何か?」です。
【プロフィール】
杉浦 元亮
東北大学 加齢医学研究所/災害科学国際研究所 准教授
「自己」をキーワードに、人間が物理的・社会的環境と適応的に関わる脳メカニズムの解明に取り組んでいる。
さらにこの新しい人間科学を高齢化や災害などの社会問題へ応用することを目指している。
※所属等は取材当時のものです。