2017年09月05日
  東北大学コラム

【信頼をめぐる謎】第2回 人はなぜ他人を信頼するのか?

東北大学 大学院 文学研究科 行動科学研究室 教授  佐藤 嘉倫

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年6月23日

 

前回お話ししたように、あなたが他人を信頼してもその人が信頼に応えてくれるとは限りません。それなのに、なぜあなたは他人を信頼するのでしょうか。

 

結論から言えば、その方が信頼しないよりもメリットがあるからです。

 

このことをもう少し丁寧に説明しましょう。AさんがBさんを信頼するかしないかという状況を考えてみましょう。

 

AさんがBさんを信頼して、Bさんが信頼に応えるならば、信頼する前よりもAさんには何らかのメリットがあります。しかしBさんが信頼に応えてくれないならば、Aさんは何らかの損失をこうむります。

 

具体的な話で説明しましょう。BさんがAさんに「急にお金が必要になったので10万円貸してほしい。貸してくれたら1ヶ月後に11万円にして返す」と言われたとしましょう。

 

AさんがBさんを信頼して10万円を貸して、Bさんが1ヶ月後に11万円返したとしましょう。Aさんは1万円得します。これがメリットです。

 

しかしBさんがお金を返さずに雲隠れしてしまったとしましょう。するとAさんは10万円を失ってしまいます。これが損失です。

 

この状況でAさんがBさんに10万円貸すのは、次の2つの条件が満たされているときです。

 

第1の条件は、メリットがあるていど大きい、というものです。Bさんが信頼に応えてくれるような人ならば(Bさんの信頼性が高ければ)、このメリットはそれほど大きくなくてもかまいません。しかし低い場合には、メリットが十分に大きくないとAさんはBさんを信頼することができません。

 

第2の条件は、損失があるていど小さい、というものです。Bさんの信頼性が高ければ、損失はあるていど大きくても構いません。しかし低い場合には、損失が低くないとAさんはBさんを信頼することはできません。

 

 

このように、AさんがBさんを信頼する背景には、Bさんの信頼性、メリット、損失という3つの要因の関係があります。このことを基礎として、さらに信頼をめぐる謎に迫っていきましょう。

 

次回は「第3回 詐欺師はどうやって人の信頼を得るのか?」です。

 

【プロフィール】

佐藤 嘉倫

東北大学大学院文学研究科教授

合理的選択理論の視点から、信頼や社会的不平等の解明に取り組んでいる。

編著に『ソーシャル・キャピタルと格差社会』(東京大学出版会、2014年)がある。

趣味 ジャズ鑑賞、ギター、料理、スキー

関連記事

新着記事