2017年09月05日
東北大学コラム
【信頼をめぐる謎】第3回 詐欺師はどうやって人の信頼を得るのか?
東北大学 大学院 文学研究科 行動科学研究室 教授 佐藤 嘉倫
仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年6月24日
前回お話ししたことから、詐欺師が人をだますテクニックを理解することができます。前回、人が他人を信頼する背景には、信頼される人の信頼性、その人が信頼に応えてくれた時のメリット、その人が裏切った時の損失という3つの要因が関係しているということをお話ししました。
詐欺師もこの3つの要因を巧みに操作しています。
まず信頼性について考えましょう。詐欺師は決して怪しげな格好をしません。きちんとした服を着て、話し方も落ち着いています。
これらは自分が信頼に応える人間である(自分の信頼性は高い)ということを相手に伝えるためです。
次に、詐欺師は自分を信頼してくれたときのメリットを強調します。
「お手持ちの資金を私に預けていただければ、銀行の利息よりも高い配当を得られますよ」といったメリットを提供します。
第3に、詐欺師は損失が小さいことも強調します。「絶対損はさせません」というようなことを言ったりします。
ここで注意しなければならないのは、詐欺師ではない普通の営業の人々も同じことをしているということです。そうなると、私たちは詐欺師とそうでない人とを見分ける必要があります。そのようなことは可能でしょうか。このことについて次回お話ししようと思います。
次回は「第4回 人はどうやって他人を信頼することを学ぶのか?」です。
【プロフィール】
佐藤 嘉倫
東北大学大学院文学研究科教授
合理的選択理論の視点から、信頼や社会的不平等の解明に取り組んでいる。
編著に『ソーシャル・キャピタルと格差社会』(東京大学出版会、2014年)がある。
趣味 ジャズ鑑賞、ギター、料理、スキー