2017年09月05日
  東北大学コラム

【信頼をめぐる謎】第5回 信頼のすすめ

東北大学 大学院 文学研究科 行動科学研究室 教授  佐藤 嘉倫

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年6月26日

前にもお話ししたように、他人を信頼することには、その人から裏切られるというリスクが常に付きまといます。

 

しかし、そのリスクを恐れすぎると、その人が信頼に応えたくれた時のメリットを得る機会を失ってしまいます。

 

また他人を信頼することで、自分の周りの狭い世界から解放されて、より広い世界に出ていくことができます。

 

信頼研究の第一人者である山岸俊男さんは信頼が人々を狭い社会から解き放つ機能を持っていることを強調しています。

 

私自身も、会ったこともない人からメールをもらっただけで、その人が主催するという国際会議に出ていくことが時々あります。もしかしたら、その人のところに行って身ぐるみ剥がされてしまうかもしれません。しかしメールの文面から「この人は信頼できる」と判断して、国際会議に出席して、世界中の研究者と出会って、そういう人たちを信頼して、さらに自分の世界が広がっていきます。

 

もちろん詐欺師に騙されるリスクには注意しなければなりません。このリスクを回避するために次の5つのことを実践することをお勧めします。

 

(1)他人の信頼性を見極める練習をする。騙された時の損失が小さい状況で、相手を信頼してみましょう。相手が信頼に応えてくれたら問題ありませんし、応えてくれなかったら「こういう感じの人は信頼できない」という情報が自分のものになります。この時の損失は「授業料」と考えてください。
(2)相手の評判をチェックする。自分の知り合いがその相手を信頼して、信頼に応えてくれたかどうか、情報を集めてください。
(3)「絶対」という言葉が出てきたら、要注意。信頼には確率的な要因が関わるので、「絶対」ということはありません。このような言葉を使う人には注意しましょう。
(4)セカンド・オピニオンを聞く。怪しいなと思ったら、他の人の客観的な意見を聞きましょう。
(5)騙された時の対策を用意。万一、詐欺師に騙されたとしても、対策はあります。たとえばコピー商品かもしれないと思ったら、現金ではなくクレジット・カードで購入しましょう。そうすれば、コピー商品をつかまされたと分かった時に、カード決算前に支払いを停止できる可能性があります。

 

他人を信頼するには練習が必要です。皆さんも詐欺師と普通の人を見極める力を養いながら、他人を信頼することで、より広い世界へ飛び出していったらいかがでしょうか。

 

次回は「頑張らなくてもよい!? 賢い健康習慣」です。

 

 

【プロフィール】

佐藤 嘉倫

東北大学大学院文学研究科教授

合理的選択理論の視点から、信頼や社会的不平等の解明に取り組んでいる。

編著に『ソーシャル・キャピタルと格差社会』(東京大学出版会、2014年)がある。

趣味 ジャズ鑑賞、ギター、料理、スキー

 

 

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