2018年03月28日
  東北大学コラム

【心豊かな暮らし方のかたちを考える『ネイチャー・テクノロジーとは?』】 第5回 「間抜け」の研究

東北大学名誉教授 石田 秀輝

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2016年4月8日掲載

 

第5回 「間抜け」の研究

心豊かな暮らし方の構造のライフスタイルという部分だけを切り出せば、今、生活者が求めているものは『依存型』ではなく『自立型』のライフスタイルである。

しかし、実際には多くのテクノロジーやサービスは『依存型』のライフスタイルを煽るものが圧倒的に多い。利便性のみを追求し、ブレーキを踏まなくても止まる車をはじめ、あらゆるものが全自動化の方向にある。

これが極端になれば、『完全介護型』のライフスタイルになる。これは健康な人をベッドに縛り付けているようなものである。初日は嬉しいかも知れない、何もしなくてもあらゆることをテクノロジーやサービスが処理してくれるのだから・・・しかし、10日も暮らせば、ストレスが溜まり、それはとんでもない苦痛になる。

お客様のことを思って作れば作るほどクレームが増える・・・今、多くの企業が抱えている問題はここにもあるように思う。ともあれ、生活者が求めているものとは逆行している。

では、自立型のライフスタイルを煽るテクノロジーやサービスはあるのか?

残念ながらほとんど無い。自立型=自給自足型と定義されているように、田舎暮らし、1次産業という認識が圧倒的に濃く、さらには、都会暮らしの人たちには、それは圧倒的にハードルが高い。要するに、自立と依存の間に『間』があるのであるが、これがすっぽり抜けている、『間抜け』なのである。(5-1)

5-1.心豊かな暮らし方のかたち(間抜けの研究)

最近、『ものを欲しがらない若者』などの議論が新聞でよく特集されているが、本当にそんな若者が存在するとは思えない、若者が求めているものは、この『間』を埋めるテクノロジーやサービスであり、利便性のみを煽るテクノロジーやサービスではないのだと思う。

『間』を埋めるテクノロジーやサービスはほとんど研究されておらず、ビジネスにもなっていないが、間違いなくここには山ほどの宝物が眠っている。間を埋めるテクノロジーやサービスとはちょっとした不便さや不自由さという制約を自分の知識やスキルで乗り越えるということである、それによって、達成感や愛着が生まれることは、家庭菜園をはじめ多くの予兆が明らかにしていることでもある。

但し、超えられない制約(ネガティブ制約)は苦痛であり、どの程度の制約までなら超えられるのかということを考えることも生活者の責任であり、そのレベルに応じて色々な制約(ex:求められるスキルのレベル)を準備することが企業の責任でもある。(5-2)

5-2.心豊かな暮らし方のかたち(間抜けの研究)

これら一連の研究から、あたらしい定常とは未来自足型の暮らしのかたちであり、それは地域が持つ(さらにローカルであれば多くのものは自然に立脚した)文化的な価値を基盤としたものであり、そこには独自の暮らし方に根付いた新しいビジネスが生まれることは間違いない。(5-3)

5-3.

そして、一部では企業が意識しているかどうかはわからないが、相対的には明らかに未来自足型のビジネスが始まってきた。(5-4、5-5)

5-4.間を埋めるビジネスとは何か?

5-5.

では、現在の企業はこの変化をこれからどう理解し、どのようにこの変化を先取りできるのだろうか?少なくとも大量生産・大量消費を前提とした、あるいは均一化されすぎてしまったものが主役になれる時代ではなくなるだろう。

間を埋めることを前提とすれば、何を均一化(利便・機能)し、何を制約とするのかが問われているのである。

電化製品は?移動媒体は?情報は?教育は?どう変化すればよいのか、そして新しく生まれる産業は何か?これに解を見出せたビジネスシステムこそが新しい定常化を先取りできるのだと思う。

自立型のライフスタイルを最先端テクノロジーが煽る、恐らく従来の思考とは大きく足場を変えた新しいビジネスフィールドがそこに見えてくる。これこそが、イノベーションなのだろう。

【プロフィール】
合同会社 地球村研究室 代表
東北大学名誉教授 石田 秀輝(いしだ ひでき)
2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。
近著;「光り輝く未来が沖永良部島にあった!」(ワニブックス2015)、Nature Technology (Springer 2014)ほか多数

※所属等は取材当時のものです。

関連記事

新着記事