2019年01月21日
  東北大学新聞

【サイカフェ】第158回『合成フェロモンを使って害虫駆除』

2018年12月号掲載

 

第158回サイエンスカフェ「合成フェロモンを使って害虫防除」が2018年11月16日、本学青葉山新キャンパス青葉山コモンズで開催された。講師は本学大学院農学研究科の桑原重文教授。会場には学生だけでなく、社会人やお年寄りなど年齢を問わず多くの人が訪れた。

桑原教授は、生物有機化学分野を専門としている。講義では、フェロモンの理解に欠かせない構造式の解説から始まり、昆虫のフェロモンや、フェロモン分子の立体構造、害虫防除の実例について説明した。

フェロモンとは、動物が生産する同種・他個体にのみ特異な反応を引き起こす化学物質のことを指す。フェロモンの研究では、動物から極微量にしか生産されないフェロモンを集めて、その分子構造を調べる。有機化合物には、構造式は同じだが、炭素原子の周辺の立体的な配置が異なる、立体異性体がある。フェロモン分子の立体異性体は、生物の受容体によって厳密に識別されており、フェロモンとしての効果も大きく異なる。そのことは理論上可能な立体異性体を化学合成し、フェロモン作用の有無を調べることで判明した。

合成フェロモンによる害虫防除では、特に性フェロモンによる応用方法が説明された。例えば、害虫の発生状況を把握する発生予察や、害虫の交尾率を低下させ次世代の害虫密度を低下させる交信かく乱などがある。桑原教授は、フェロモンを応用した実際の商品を用いて、利用方法を見せた。

また交信かく乱用フェロモンの長所と短所を殺虫剤と比較して指摘。フェロモンには人畜魚に対する毒性がないことや、分解されやすいため環境汚染の問題が生じないなどの長所がある。一方で、広い場所で使用しなければ大量に投与しても効果が薄いことや、コストが高いことなどが短所として挙げられる。桑原教授は、「環境汚染の問題や食の安全性への意識が高まることで、合成フェロモンの利用は増えるだろう」と述べた。

その後、テーブルディスカッションが行われ、参加者が講義の内容を確認したり疑問点を挙げたりする姿が見られた。各テーブルには分子模型が置かれ、分子の構造について間近に見ることで参加者の理解を助けた。

全体での質疑応答では、フェロモンのことや研究を応用した商品開発、桑原教授の研究への姿勢など、多くの質問が寄せられた。参加者の多岐にわたる質問に対し、詳細に答える桑原教授によって、内容はより充実したものとなった。会場後方には、害虫防除用の商品が展示され、終了後、多くの参加者が興味を示した。

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