2017年11月27日
  東北大学コラム

【機能性ヨーグルトのひみつ】第1回 ヨーグルトに使われる乳酸菌とは?

東北大学大学院 農学研究科教授     齋藤 忠夫

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年9月21日掲載

 

〈はじめに〉
地球上にはたくさんの微生物(細菌、酵母、カビ)が住んでいます。微生物もヒトと同じように、ブドウ糖(グルコース)が生きる上で必要です。ブドウ糖は植物の「ぶどう(葡萄)」から発見された糖なので、この名前の由来があります。

ブドウ糖は、体内で糖を分解してエネルギーを作り出す「解糖系」で利用されて、ATP(アデノシン3リン酸)を作り出します。この仕組みはヒトも乳酸菌も同じです。ATPは体内の全ての酵素反応で利用される高エネルギーリン酸化合物で、リン酸基が外れる際に多量のエネルギーを出してくれます。乳酸菌は、大好物のブドウ糖からATPを作る際に「乳酸」という有機酸をたくさん作り出すので、「乳酸菌」と呼ばれます。腸内にはいませんが、酢酸をたくさん作る菌は酢酸菌、酪酸をたくさん作る菌は酪酸菌と呼ばれています。乳酸はヒト腸管を刺激しない代表的な酸と考えられており、乳酸菌はヒト腸内に住んでいる有用菌の代表です。

〈体を内側から守る乳酸パワー〉
乳酸菌は、微生物の分類上は多くの種類(菌属と菌種)が存在しており、現在の科学では「33属」までの存在が確認されています。将来に分析技術が進歩すると、さらに属は増えるでしょう。

小腸から大腸までの腸内にいる乳酸菌は、私たちの腸内の健康を守ってくれます。乳酸菌の作り出す乳酸は、腸管局所でのpHを下げて酸性にすることで病原菌の増殖を防ぎ、また腸を刺激して腸管蠕動(ぜんどう)運動を進めて便秘を防ぎます。

乳酸菌にはヒトに危害を与えるものは一つも見つかっていません。ですから、乳酸菌は発酵乳(ヨーグルト)、乳酸菌飲料、チーズなどの乳製品をはじめ、味噌、醤油、漬物など様々な食品の製造に世界中で広く利用されています。

ヨーグルトは乳(ミルク)を乳酸菌で発酵させた食品で、一般的には「発酵乳」と呼ばれます。ただし、世界の地域により呼び名が異なり、ブルガリア地方のヨーグルトと現地で呼ばれる発酵乳の呼び名が世界中に広まったものです。ヨーグルトに使用されている代表的な乳酸菌に、植物起源のブルガリア菌やサーモフィルス菌があります。ブルガリア菌はサーモフィルス菌の作り出す蟻酸により良好な生育をするため、ヨーグルトにはこの2種類の菌がペアーで使われるのが一般的です。欧米ではこの2種類の菌を使って作った発酵乳だけを、「ヨーグルト」と表示することができます。

図1には、ヨーグルトを電子顕微鏡で直接見た図を示しました.縦長のブルガリア菌と丸い連鎖状のサーモフィルス菌がヨーグルト組織(タンパク質)の中に良く見えます
ブルガリア菌は食べたあとヒトの腸管の中では増えませんが、ヨーグルト中に乳糖を分解して多量に作り出した「乳酸」が有効です。また、ある種のブルガリア菌が菌体外に作り出す「多糖」に、高い免疫活性化機能のあることが証明されています。最近では、このように食べてヒトの健康に良い効果をもたらす乳酸菌を「プロバイオテイクス」と呼ぶこともあります。

 

〈乳酸からプラスチックが作れる!?〉
最近では、トウモロコシやサツマイモから採れる澱粉を原料に乳酸菌を作用させ、作り出す乳酸を重合してポリ乳酸からプラスチック(PLA樹脂)を作り、食品用トレイや携帯電話やパソコンの外装などの家電品パーツにも利用されています。さらに改良すれば自動車のインパネやドアトリムやピラートリムなどの自動車パーツにも高度利用されるでしょう。乳酸菌は私たちの生活に欠かせない大切な菌と言えるでしょう。

 

次回は「第2回 最近よく耳にするプロバイオティクスと腸内フローラとは?」です。

 

【プロフィール】
齋藤 忠夫(さいとう ただお)
東北大学大学院 農学研究科教授
より優れた乳酸菌を用いて新機能性ヨーグルトの開発に取り組んでいる。
著書には『畜産物利用学』(文永堂出版、2011年)他、30冊がある。
趣味 ピアノ演奏

※所属等は取材当時のものです。

 

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