2017年11月27日
  東北大学コラム

【機能性ヨーグルトのひみつ】第3回 ヨーグルトには食べる時期と食べ方がある?

東北大学大学院 農学研究科教授     齋藤 忠夫

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年9月23日掲載

 

〈進化するヨーグルト〉
世界には、牛乳を乳酸菌や酵母で発酵させた「発酵乳」が沢山あります。“カスピ海ヨーグルト”を自宅で作られている方も多いでしょうが、カスピ海近くのブルガリア地方では、古代より「ヨーグルト」と呼ばれる発酵乳がありました。図1に示しましたイリア・リッヒ・メチニコフというノーベル賞受賞者が、この地方に長寿者が多いのはこの食品のお陰であると「ヨーグルト長寿説」を発表したことから、世界中に「ヨーグルト」の名前が広がりました。

 

国際酪農連盟(IDF)は、ヨーグルトは2種類の乳酸菌(ブルガリア菌とサーモフィルス菌)を使って乳を発酵させたもの、と規定しました。一方、日本では世界に先立ち、1991年に「特定保健用食品(トクホ)」の制度が創設されました。(図2)

現在では1150種類のトクホが消費者庁から認可され、トクホヨーグルトも約100種類が販売されています。もう日本でも、ヨーグルトは誰でも知っている食品の部類に入っています。これらのヨーグルトには、上記2種類の乳酸菌に加えて、ヒト腸内から見つけたプロバイオティクスを使用した「機能性ヨーグルト」が沢山あります。

これらの機能性ヨーグルトは、一般的な整腸作用を期待するヨーグルトと比較して、アレルギーに効果があるなど特別な生理機能を発揮するものがあります。

 

〈効率が良いヨーグルトの食べ方〉
ヨーグルトに食べる時期と食べ方があるのをご存知ですか?ブルガリア菌とサーモフィルス菌で発酵させたヨーグルトには、たくさんの乳酸菌体と菌が作り出した乳酸が含まれています。牛乳はいつ飲んでも良いですが、「ヨーグルトには食べる時期」があります。

よりカルシウムを多く摂りたい場合は、「食前」が良いでしょう。空腹で胃内pHが低い時が狙い目です。より多くのカルシウム分子がイオン化して腸管からの吸収量を増します。

一方、より多くの生きた乳酸菌を摂りたい場合は、「食後」が良いでしょう。トクホの機能性ヨーグルトに含まれているビフィズス菌はとくに胃酸に弱いですので、胃内pHが高くなった時が狙い目です。歳を取るにつれて牛乳が飲めなくなる方(乳糖不耐症)が増えますが、ヨーグルトではこの原因となる乳糖の約40%以上が乳酸菌により分解利用されていますので、安心して召し上がって頂けます。

〈菌とおなかに優しいホットヨーグルト〉
最近はホットヨーグルトとして40度以下くらいに少しレンジなどで暖めて、乳酸菌とお腹に優しい温度で食べる食べ方も知られています。とくに、寝る前にヨーグルトを食べ、体と脳は休んでいますが、腸が一生懸命消化作業をしている活発な時期に、乳酸菌やビフィズス菌を補給することも、より優れた整腸作用には賢い食べ方といえます。

ヨーグルト中の菌体は、腸内の有害物質を吸着して速やかに排除するお掃除役としても、また免疫機能を活性化して病気を防ぐ作用もあります。また、ヨーグルト中の乳酸は腸内pHを下げて病原菌などを排除し、腸管も刺激して便秘を防ぎ、腸内健康を守ります。

〈ヨーグルトで大腸がん予防!?〉
ヨーグルトで大腸がんを防ぐことも可能です!日本人女性の死因の第一位は大腸がんです。男性でも第3位と高くなりました。要注意です。食品は無限の種類がありますが、大腸がんを防ぐという食品は少ないでしょう。

便秘で悩んでいる方は多いと思いますが、便秘はどこで起こるのかをご存知ですか?図3に、ヒトの腸管の模式図を示しました。オレンジ色の部分が大腸です。便秘は小腸や大腸上部では起こらず、S状結腸から直腸というわずか30cmほどの下部消化管で起こります。大切な点は、この場所が大腸がんの70%以上が起こる場所と一致していること、さらには潰瘍性大腸炎(UC)の初期炎症もこの場所で起こることです。ヨーグルトにより便秘を防げることは、すなわち大腸がんを未然に防ぐことが可能であるということです。

 

〈ブルガリア地方の方は一日に1kgものヨーグルトを食べる〉
私たちは、この消化管下部に強く結合する乳酸菌やビフィズス菌を沢山見つけました。
これらのプロバイオティクスを利用し、直腸などで悪玉菌の定着を防ぎ、腸管細胞への侵入を防ぐことで、食の欧米化で日本人にも急増している潰瘍性大腸炎(UC)を予防するヨーグルトを開発しています。

ブルガリア地方では、一人当たり一日1kgのヨーグルトを食べており、便秘知らずだそうです。ヨーグルトは整腸作用と便秘防止の威力が実証されており、大腸がんを防ぐ数少ない食品と言えるでしょう。

ヨーグルトは一日どのくらいを食べれば良いでしょうか?

私は、450g入りのプレーンヨーグルトの一箱を3日で食べる、すなわち「毎日約150gのヨーグルトを食べる」ことをお勧めします。また、例え食べ過ぎたとしても全く問題はありません。また、下部消化管の健康をより考えるのでしたら、ビフィズス菌入りのヨーグルトをお勧めします。

〈ヨーグルトにお勧めのトッピングは?〉
ヨーグルトをさらに効果的に食べるには、「お勧めのトッピング」としてオリゴ糖を含むはちみつや市販のフラクトオリゴ糖などを加え、さらにアロエ、ナタデココ、バナナやきな粉などの食物繊維も補っていただければ完璧です。

前述のブルガリア地方では、ヨーグルトをお肌に塗る利用方法もされており、食べるだけでなく保水性を高める美容効果も大いに期待して良いかと思います。この場合は、乳タンパク質や乳糖に保水性が非常に高いからという科学的理由もあります。

次回は「第4回 最近話題の機能性ヨーグルトLG21, R-1, PA-3とは?」です。

 

【プロフィール】
齋藤 忠夫(さいとう ただお)
東北大学大学院 農学研究科教授
より優れた乳酸菌を用いて新機能性ヨーグルトの開発に取り組んでいる。
著書には『畜産物利用学』(文永堂出版、2011年)他、30冊がある。
趣味 ピアノ演奏

※所属等は取材当時のものです。

関連記事

新着記事