2017年11月27日

【機能性ヨーグルトのひみつ】第5回 研究室で進めている新機能性ヨーグルト研究

東北大学大学院 農学研究科教授     齋藤 忠夫

仙台放送ニュースアプリ【みんなのゼミ】にて
2015年9月25日掲載

 

さて、本日は私たちの研究室で進めている機能性ヨーグルトの最前線を紹介します。

〈潰瘍性大腸炎を予防する機能性ヨーグルトの開発〉
皆さんは潰瘍性大腸炎(UC)という病気をご存知でしょうか?
大腸に潰瘍が出来る炎症性腸疾患の代表的な病気ですが、原因は分かっていません。食事の欧米化が原因と言われていますが、それならなぜ一部の方にしか発症しないのかは、不明です。現在日本では、14万人もの方が発症しており、政府指定の難病にもなっています。

この病気は長い間、自己免疫疾患と考えられて来ましたが、ある特定の腸管内の悪玉菌が原因となっているという最近の学説が有力です。

UC患者さんでは、腸内に悪玉菌である硫酸基還元菌(SRB)が増えており、腸管を覆って守っている腸粘液の成分である糖タンパク質の糖鎖から硫酸基が失われ、悪い菌の侵入を防ぐバリアー機能が低下していることが知られています。バリアーが無くなることで、腸管上皮細胞から悪玉菌が侵入し、その結果として潰瘍が起こるのだと考えられます。これを防ぐには、悪玉菌のSRBを速やかに腸管から排除することが大切です。

本来土壌に棲むSRBは硫酸基がないと呼吸が出来ず生きられません。しかし、腸粘液から硫酸基を切り出してSRBに与えるバクテロイデスという日和見菌がいます。この硫酸基が好きなSRBやバクテロイデスを追い出すために、同じように硫酸基に結合性の高いプロバイオティクスは戦力となります。現在、これらのプロバイオティクス菌を腸溶性カプセルに閉じ込めて下部消化管に確実に届け、悪玉菌をヒト腸管から追出す機能性ヨーグルトの研究を進めています。

〈セシウムを体内から追出す体内除染用の機能性ヨーグルトの開発〉
また、別の機能性ヨーグルトを紹介します。2011年3月の福島原発1号炉の爆発により沢山の放射性物質が自然界に放散されました。この時には、4.7kgのセシウム137(137Cs)が生まれ、現在もその除去に大変苦労しています。体外にあるセシウムは除去が可能ですが、食品や水から体内に取込まれたセシウムを除去する有効な方法はありませんでした。私たちは、宮城大学との共同研究により、植物から取った乳酸菌で、細胞表層にセシウムを強く結合し、かつヒト腸管には全く結合しないものを発見しました。

これらの乳酸菌を使用して作ったヨーグルトでは、体内からセシウムを除去する「体内除染」が可能となり、学会でも注目されています。

〈お年寄りのサルコペニア(筋肉減少症)を防止する機能性ヨーグルト〉
さらに、現在研究中の機能性ヨーグルトを紹介します。日本人の平均寿命は女性で87歳、男性でも81歳と、世界でも一番の長寿を誇っています。しかし、実際には元気で動ける健康寿命は、もっと短いのです。女性の場合は、10年以上前から要介護や要支援となる方が多く、この段階で健康寿命は尽きたと言えます。早めの対策がとても大切です。

さて、75歳以上の後期高齢者の多くの方で見られるのは、「サルコペニア(筋肉減少症)」と呼ばれる筋肉が減少する病気です。この病気を防ぐ方法は、筋肉を増やすアミノ酸であるロイシン、バリン、イソロイシンなどの分岐鎖アミノ酸を意識して日ごろより食事から摂ることです。しかし高齢者は食欲も減少する問題もあります。私たちは、この様な分岐鎖アミノ酸やそれを含むペプチドを「腸内で」作り出す乳酸菌を探しています。また、免疫系を刺激する菌体外多糖を、「腸内で」作り出す乳酸菌やビフィズス菌も探しています。この様なプロバイオティクスを使用して、食事に加えて腸内から高齢者の健康を栄養支援する機能性ヨーグルトも研究中です。

〈最後に〉
以上、5日間に渡り、機能性ヨーグルトの世界におつきあい頂きまして、有り難うございました。これからも、優れた性質を持つプロバイオティクスを一つでも多く見つけ、私たちの健康に寄与する研究に結びつけて行きたいと思いますので、ご期待ください。

 

【プロフィール】
齋藤 忠夫(さいとう ただお)
東北大学大学院 農学研究科教授
より優れた乳酸菌を用いて新機能性ヨーグルトの開発に取り組んでいる。
著書には『畜産物利用学』(文永堂出版、2011年)他、30冊がある。
趣味 ピアノ演奏

※所属等は取材当時のものです。

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